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2008/08/29

<韓国経済>大宇造船の売却大詰め

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    財界最大の関心事となっている大宇造船の売却、金融界を巻き込み4社の買収合戦が本格化している

 財界の版図を変える大宇造船海洋の売却が大詰めを迎えている。筆頭株主の産業銀行が実施した買収意向書(LOI)の受け付け(8月27日締め切り)には、ポスコ、GS、ハンファ、現代重工業の4社が名乗りを挙げ、本格的な買収合戦が始まった。産業銀行は、9月第2週に予備入札、10月中旬に本入札を実施し、同行(31・3%)と大株主の韓国資産管理公社(19・1%)を合わせた大宇造船の持ち株9639万3000株(50・4%)を売却、年内に民営化を完了する方針だ。

 産業銀行は買収意向書を提出した企業の適性を審査した後、9月上旬から約3週間かけて具体的な調査に入る。

 買収に意欲を示しているポスコ、GS、ハンファ、現代重工業の4社は、大宇造船の買収に向け戦略チームを強化し、成否のカギを握るとみられるコンソーシアム(共同企業体)の構成に総力を傾けている。また4社は、国民年金や都市銀行などから資金を引き出すため、コンソーシアムへの取り込みを急いでいる。国民、ウリ、新韓、ハナなどの各銀行と農協なども、本入札での落札が有望なパートナーの選定に向け、水面下で動き出した。

 新韓銀行は、ポスコが最有力とみてポスコ陣営に加わる予定で、国民銀行はポスコとGSを天秤にかけているといわれている。農協はGSと、ハナ銀行はハンファと提携する可能性が高い。ウリ銀行は、買収に名乗りを挙げたポスコ、GS、ハンファと取引関係にあり、模様眺め状態だが、金融界ではポスコ側につくとみている。

 金融関係者は、「大宇造船ほどの大規模企業を買収するには、少なくとも2~3カ所の投資先を確保する必要がある。銀行間で連携する可能性もある」と話す。

 一方、買収戦を大きく左右するとみられているのが、大宇造船の買収に最大1兆5000億ウォンを投資すると表明している国民年金管理公団の動静だ。政府も公的資金を投入した企業の利益を国民に還元するという意味で大宇造船の買収に国民年金が参加することを歓迎しているといわれている。資金力の豊富な国民年金をどの企業が取り込むのか、これが勝敗を分けるとみられており、各社とも国民年金の誘致に必死だ。

 造船界で世界トップの現代重工業の参入も注目される。系列企業の現代尾浦造船、現代三湖重工業を合わせると、同社の手持ち工事量の世界シェア(7月末基準)は約13%に達し、大宇造船(シェア5・7%)の買収に成功すれば、グループとしての世界シェアが20%近くに達し、世界の造船市場で無敵となる。

 現代重工業のねらいは、原油高によってドリルシップなど大宇造船が得意とする原油開発設備の収益性が高まっていることと、GSやポスコに大宇を取られれば、造船市場での地位が揺らぐと懸念しているためだ。

 大宇造船の売却についても市場の関心が高い。証券アナリストによると、大宇造船の売却額はプレミアムを考慮しても株式市場の急落などで当初の7兆~8兆ウォンから5兆~6兆に下がる公算が大きい。