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2008/06/27

<韓国経済>妥結はしたが、なお火種・韓米牛肉追加交渉

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    米牛肉の輸入反対を訴える主婦ら。追加交渉が妥結したとはいえ、国民の不安はなお根強い

 国民の大規模デモに発展し、混乱が続いていた米国産牛肉の輸入問題にようやく決着がついた。政府が発表した韓米牛肉追加交渉の結果をみると、30カ月以上の牛肉の輸入が禁止となり、30カ月未満であっても、頭蓋骨、脳などの危険部位は輸入禁止品目に追加された。しかし、30カ月以上の牛肉の輸入規制がきちんと守られるのか保証はなく、また規制の期限があいまいになっているなど、なお火種は多い。政府は26日に告示し即日発行したが、野党が反発し、再び紛糾しそうだ。

 韓米が妥結した米国産牛肉の追加交渉の内容は、▽韓国の消費者の信頼が回復するまで、米農務省が運営する月齢30カ月未満の牛肉の品質制度評価プログラム(韓国QSA)が適用された作業場で生産された牛肉・牛肉製品に限り韓国への輸入を許可する▽月齢30カ月未満の牛の脳、目、頭蓋骨、脊髄は特定危険部位に指定されていないものの、検疫検査過程で発見された場合には返送する▽点検・衛生条件に違反した作業場に対する韓国政府の検疫権限を明確にする――など。

 追加交渉は妥結したが、まだ論争は鎮まっていない。なかでも30カ月以上の牛肉が本当に輸入されないのか、この点に議論が集中している。金宗壎・通商交渉本部長は、「米国政府は30カ月以上の牛肉の交易中止を保証する」と明らかにしたが、米国政府の保証は、QSA(品質制度評価プログラム)だ。当初、韓国はEV(輸出証明)プログラムの適用を要求した。EVは、米国政府が月齢などの表示を確認し、まちがいないことを証明するものだが、QSAは民間業者が自主的に定めた基準表示を間接的に保証するもので、大きな差がある。米農務省が基準の履行の有無を点検するとしているが、基本的には国家ではなく民間業者の自主品質管理システムとなる。

 農林水産食品部は、国家が直接関与すればWTO(世界貿易機関)協定に抵触するため、EVプログラムを適用しなかっただけで、内容はEVもQSAも変わらないと説明している。

 一方、追加交渉で妥結した内容に適用期限が明示されていないことが問題視されている。両国は、「韓国の消費者の信頼が回復するまで無期限の経過措置」としているが、韓国の世論を考慮して期限を定めなかっただけで、一時的措置との見方が強い。「経過措置」という表現が使われていることに、不信感を抱く専門家は少なくない。

 30カ月未満の牛の頭蓋骨、脳、目、脊髄が輸入禁止となったが、最初の協定では扁桃と小腸の一部のみを禁止としていた。今回の禁止部位は、OIE(国際獣疫事務局)が定めている狂牛病特定危険部位ではない。OIEは、30カ月以上の牛にのみ、これらの部位を危険部位に指定している。しかし、消費者が好んで食べる小腸、四肢骨、尾骨などの輸入も禁止すべきだとの声がある。これに対して通商交渉本部は、国際的な危険部位の基準を無視して、韓国だけが輸入を禁止するわけにはいかないと理解を求めている。

 政府が追加で獲得した検疫権は、規制基準に2回以上違反した米国業者からの輸入を差し止めることができるというものだ。当初の協定では、明確な規定がなかった。また、韓国政府が、牛を解体する作業場を決められるようになった。政府は「事実上、屠畜場を制限できる権限を持つ」と語っているが、最終的には米国が判断することから、根本的に変わらないという指摘もある。

 行政安全部は今回の追加交渉の内容を官報に掲載し、26日に発効したが、世論が納得するかどうかは不透明だ。