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2008/02/29

<韓国経済>新政権の実用経済政策始動

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    新政権は、庶民生活を圧迫している物価対策に全力を挙げ、石油税などの引き下げに取り組む

 李明博大統領の実用主義経済政策「MB(ミョンバク)ノミクス」の実施に向け、新政権が動き出した。当面の課題である物価の安定に力を注ぐとともに、大統領職引継委員会がまとめた政府の骨格を基本に、各種規制緩和、減税など「MBノミクス」の基本枠組みを早急に決定する方針だ。

 MBノミクスの最初の課題は、規制緩和を通じた企業の投資活性化だ。年7%の成長が可能な体制へ、経済をアップグレードする。新政権は、手始めに企業の投資を妨げる出資総額制限制度(大企業の相互出資規制)を廃止する方針だ。

 首都圏グリーン(環境)規制の合理化、農地・産業用地など土地利用規制の緩和といった「戦略的規制改革」も重点的に進める。このうち首都圏規制の合理化は、企業が歓迎しており、投資を呼び込む起爆剤になると期待されている。外資誘致の活性化も、3カ月以内に取り組む計画だ。

 しかし、MBノミクスの実施は容易ではない。最も懸念されるのは、庶民の家計を圧迫する物価上昇だ。先月の消費者物価上昇率は3・9%で、3年4カ月ぶりに最高値を記録。輸入物価も21・2%上昇し、9年3カ月ぶりに高値を更新した。これに対応して李政権は、石油類の税引き下げ、高速道路通行料の調整及び出退勤時の50%引き下げ、住宅ローンの負担緩和などを早急に実施する見通しだ。

 さらに、李大統領が強調してきた「労使関係の法治主義確立」も喫緊の課題だ。今後、労働界との軋轢も予想されるが、「法治」を強調しても労働界との協調を重視し、一方的に譲歩を迫ることはないとみられる。

 李大統領は「内需拡大」を強調しており、物価安定を損なわない範囲で、経済成長に重きを置いた政策をとるとみられ、金利、財政、為替などの政策に変化が予想される。マクロ経済の運用においては、財政と経常収支の一時的な赤字を容認することもやむなしという考えで、景気浮揚のための短期対策を忌避した盧武鉉政権の経済政策とは全く異なっている。

 一方、不動産政策は、価格の安定を最優先する方針だ。これに伴い、容積率の規制緩和と住宅1戸のみの長期保有者などに対する総合不動産税の緩和などは先送りとなる。また、LTV(住宅担保認定比率)、DTI(総負債償還比率)などの住宅担保貸出関連規制も、そのまま維持する。

 金産分離の緩和、産業銀行の民営化などの公約についても、直ちに3月からスタートする見込みだ。大運河構想に関してはやや慎重だが、国民世論の賛同を得るため討論会と環境探査を3月末から4月初めにかけて行い、「韓半島大運河特別法」の制定も検討するとしている。

 産業銀行の民営化とともに推進される金産分離の規制緩和は、上半期中にタスクフォースを立ち上げる。さらに公聴会などを経て、産業銀行の政策金融機能を代替する「KIF(コリア・インベストメント・ファンド)」を今年中に設立する計画だ。