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2008/01/01

<韓国経済>成長率5%割れ予想も

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 「経済大統領」の李明博政権の誕生で、低迷している韓国経済は再生できるのか。李次期大統領は、「747政策」を掲げ、成長率7%を達成して300万人の雇用を創出し、一人当たり国民所得4万㌦を実現、10年以内に世界7位の経済大国(G7)に躍進すると公約している。新大統領の手腕に国民の期待が集まっているが、前途は多難だ。韓国銀行は、今年の成長率を4・7%と厳しい見方をしており、民間の研究所も、よくても5%前後と予測、2007年より鈍化するとみている。各シンクタンクの「2008年経済展望」をもとに、今年の韓国経済を占う。

◆原油高の影響懸念 ――韓国銀行◆

 韓国銀行は、2008年の経済成長率を昨年(4・8%)よりやや低い4・7%と展望している。政府が今年度予算案作成時に提示した予想値(5・0%)より低く、国策研究所や民間研究所の予想値5・0-5・2%をもはるかに下回っている。

 韓国銀行の金在天・調査局長は、「他の研究所が2008年の予想値を出したのは昨年9-10月で、その後、国際原油価格が跳ね上がるなど経済状況が大きく変わった」と成長率を4・7%と予測した根拠を説明している。

 韓国銀行は、昨年12月5日に発表した「2008年度経済展望」で、今年のGDP(国内総生産(GDP)成長率を通年で4・7%とし、上半期は4・9%と高いものの、下半期に入って4・4%に失速するとの見通しを明らかにした。

 李成太・韓国銀行総裁は、昨年10月の国会の国政監査で、「2008年の経済成長率は5%前後になるだろう」と言及していたが、その後の景気後退を加味して4・7%に修正した。金局長は、「これまでは、原油高の衝撃を先進国の景気好調と新興市場の高成長などで吸収できた。しかし、今後は世界経済の成長鈍化や物価不安の拡散などでマイナス要因が次第に顕在化してくるだろう」と分析している。

 韓国銀行は、今年の主要経済指標が2007年より悪化すると予想している。民間消費増加率は昨年の4・4%から4・3%に小幅鈍化し、設備投資は7・6%から6・4%に、輸出は11・3%から10・3%に低下するとみている。ただし、建設投資は、住宅景気の不振にもかかわらず、国土均衡開発事業などで昨年(1・8%)より上向き2・8%と展望している。

 消費者物価は昨年(2・5%)より大幅上昇し、3・3%前後に達する見通しだ。特に上半期は、個人サービス料金の集中引き上げによって、韓国銀行の物価管理目標値(3±0・5%)の上限である3・5%に達すると予想している。

 経常収支については、30億㌦の赤字に転落すると予測している。経常収支が赤字に陥るのは1997年の通貨危機以降初めて。

◆下期から景気下降 ――サムスン経済研究所◆

 サムスン経済研究所は、「2008年韓国経済展望」で、今年の経済成長率を5・0%と予測している。

 しかし、回復傾向をみせている韓国経済が、第1四半期をピークに下降に転じ、景気は典型的な「上高下低」現象を示すと分析。さらに、米国の住宅市場の沈滞が消費不振につながり、米国の経済成長率が1%未満に落ちる可能性があり、その場合には韓国の成長率が2007年の4・8%(推定)より低くなると予想している。

 一方、民間消費増加率は、北京五輪特需と証券市場の活況による消費増大効果によって上半期は4・7%まで上昇するが、上半期に入り4・3%に低下。年間では昨年の4・4%から4・5%へ小幅上昇にとどまる見通しだ。また、設備投資増加率は上半期の6・3%から下半期は7・9%に上昇し、建設投資も3・1%から4・7%に回復する。

 このほか、今年はウォン高が一層進み、昨年下半期に1㌦=923ウォンだった為替レートは、今年上半期は915ウォンをつけ、下半期は905ウォンまで上がると推測。対円レートは上半期に100円=839・40ウォン、下半期は815ウォン台で推移するもようだ。

 経済指標を左右する原油価格(ドバイ産基準)については、昨年第4四半期の1バレル=83・7㌦から上半期は76・69㌦に、下半期は71・80㌦まで下がると予想している。

◆内需が徐々に回復 ――KDI◆

 韓国産業開発研究院(KDI)は、「2008経済展望」で、世界景気の鈍化によって昨年2ケタの伸びを示していた輸出が今年は1ケタに落ちると予想。その半面、内需は緩やかな回復傾向を持続し、輸出と内需で明暗が分かれると分析している。KDIによると、昨年は好調な輸出が成長率を予想以上に引き上げたが、今年は内需の好調が韓国経済を支え、成長率を5%前後に押し上げるもようだ。

 KDIは、対外的な経済環境は悪化するも、国内景気の回復による雇用改善と実質購買力の増大などで内需が拡大傾向を維持し、韓国経済は2008年まで3年連続で5%前後の安定した経済成長を示すとみている。

 民間消費は2006年の4・2%、2007年の4・4%から今年は4・5%に増加し、低迷していた建設投資も昨年の3・3%から4・3%に回復する。これによって内需が堅調に回復する見込みだ。

 半面、長いこと好況を維持してきた輸出は、対外与件の悪化によって、勢いが弱まると予想している。輸出増加率(物量基準)は昨年の11・3%から今年は1ケタの9・7%に鈍化し、金額基準でも昨年の13・5%から10・9%に後退する。これによって、経常収支が11年ぶりに赤字に転落する可能性が高まった。

 専門家らは輸出の鈍化よりも内需の回復を重く見ており、10%前後の高い輸出増加率を維持しながら、内需景気が徐々に回復すれば、韓国経済は輸出と内需の均衡がとれ、理想的な発展形態となる。財政経済部も、耐久財の消費回復などを根拠に、内需と輸出がバランスを保ちながら景気上昇が続いているとの判断を下している。

 しかし、内需の回復を楽観視するのはまだ早い。KDIは、対外的な不安要因だけでなく、国内の住宅景気の冷え込みなど、不安要因も少なくないと指摘しており、不動産など特定部門で発生するリスク管理が必要だと強調している。