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2012/08/10

<韓国経済>KDI・「家計負債非常対策」を建議

  • KDI・「家計負債非常対策」を建議

    景気後退による所得減少などで低所得者層の多くが負債の返済余力がなくなってきている(写真は銀行の相談窓口)

 家計負債の急増に憂慮の声が高まっている中、国策研究機関のKDI(韓国開発研究院)が景気悪化の可能性に備え、「家計負債非常対策」を建議した。KDIは、「家計部門の負債返済余力の評価と示唆点」と題する報告書を発表、「負債を返済する余力がない低所得層が増えており、景気鈍化の可能性と欧州財政危機の深刻化などで危険が大きくなっているだけに事前の対策が必要だ」と主張した。

 KDIが最悪の状況を想定して非常対策を求めるのは極めて異例だ。金研究委員は「家計負債問題が悪化する状況で、マクロ経済の環境が悪化すれば、金融機関の資産健全性が急速に下落し、資金仲介機能が低下する可能性がある」と憂慮した。

 同報告書によると、統計庁の「2011年家計金融調査」を分析した結果、借金を抱える世帯の33%が赤字状態にある。つまり、消費と借金返済額が収入を上回っており、借金返済余力がないことがわかった。また、資産より負債が多い、純資産(資産-負債)がマイナスの世帯が借金を抱える世帯の7%を占めている。

 韓国の1757万世帯(10年)の中で、借金がある世帯が63%を占めており、赤字状態の世帯は365万世帯に達することになる。また、負債が資産よりも多く、かつ赤字状態の世帯は全体の3・28%(36万世帯)にのぼる。

 特に、赤字状態の世帯は低所得層に集中しており、全体の平気3・28%の4倍を超える13・48%に達している。つまり、返済能力は低所得層ほど低いことが分かった。

 金KDI研究員は「所得水準が低く、貯蓄銀行など第2金融圏からの貸出が多い多重債務者ほど家計破綻の可能性が高い」と指摘した。「所得下位20%が占める負債比率は3・8%で、金融市場全般を揺るがす可能性は低いが、借金状態にある世帯が多く、景気下落で貧困が広がれば社会問題化する」と懸念した。

 また、自営業に従事する世帯の方が、賃金勤労世帯よりも負債比率が高いことも分かった。

 不動産市場の低迷で資産の売却が難しく、借金があり赤字状態の世帯がさらに借金を重ねる悪循環に陥る可能性も懸念されており、KDIは、返済能力が弱い世帯を中心に多様な支援を講じる必要があると主張している。