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2012/10/05

<韓国経済>新興財閥・熊津グループが経営破綻

  • 新興財閥・熊津グループが経営破綻①

    極東建設の本社社屋。持ち株会社の熊津ホールディングスも入居している

  • 新興財閥・熊津グループが経営破綻②

                     尹 錫金会長

 相次ぐM&A(合併・買収)で財界32位にまでのぼりつめた熊津グループが座礁した。グループ持ち株会社の熊津ホールディングスと系列企業の極東建設が、資金難を理由にソウル中央地裁に法定管理(日本の民事再生法適用に当たる企業再生手続き)を申請した。ソウル地裁は認可する方向で検討しているが、法定管理が認められなければ、2社とも倒産し、グループ解体もあり得る。

 熊津グループの経営危機は、2007年6月に6600億ウォンで買収した極東建設の経営悪化が最大の要因だ。熊津グループは、極東建設正常化のため44000億ウォンを注ぎ込んだ。だが、資金難を解消できず、満期を迎えた150億ウォンのCP(コマーシャル・ペーパー=短期に資金調達するための無担保約束手形)を償還できず、ついに不渡り事態となった。

 熊津ホールディングスは、極東建設に4200億ウォン以上の支払い保証を行っているため、債務を返済しなければならない苦境に陥った。両社が同時に法定管理を申請したのは、連鎖倒産を回避するためと見られている。

 裁判所が申請を認めれば、債権債務が凍結され、裁判所が指定する管財人が会社を運営することになる。ソウル地裁は企業規模と事態の重大性を考慮し、ファーストトラック(迅速処理)制度を適用し、できるだけ速やかに処理する方針だ。同制度では、通常1カ月以内に下される企業再生手続き開始の決定が2週間以内に出る。また、再建計画案が認可されれば、尹錫金(ユン・ソックム)会長が経営権を維持し、自主再建を図ることができる。

 尹会長のモラルハザードを問う声も出ている。熊津ホールディングスが、系列企業からの短期貸付金530億ウォンを法定管理申請の前日に早期返済したからだ。系列企業が損害を受けないよう申請直前に急いで返済したとの見方が出ている。

 金融業界関係者は「再生手続きを申請すると債務が凍結され、多くの小規模協力会社が倒産の危機に直面するが、系列企業への債務を優先的に返済したのは道徳的に問題がある」と指摘した。金融当局の関係者も「今回の取引が正常なものかどうか、検証する必要がありそうだ」としている。

 個人投資家や取引関係の中小企業、金融機関の被害も小さくない。少なくとも2兆5000億ウォンにのぼると推定されている。特に、1200社に上る極東建設の下請け会社はもとより、孫会社やひ孫会社まで、軒並み不健全化する可能性が懸念されている。

 金融監督院によると、06年に経営難を招いた経営陣が管財人として維持されること容認した「統合倒産法」が施行されて以降、企業再生手続きを申請する企業が大幅に増えた。06年には76社だったが、昨年には10倍近い712社に増えた。

 金融監督院関係者は「世界的な金融危機など景気低迷の影響もあるが、オーナーが経営権を事実上維持できるため、申請が増えている。熊津の企業再生手続き申請も、尹会長が経営権を維持する意図があるとみている」と述べた。


 熊津グループは、「サラリーマン神話」といわれる尹錫金会長が一代で築き上げた新興財閥。1980年創立。系列企業28社を擁し、売上高は6兆1000億ウォン(昨年)。

 矢継ぎ早にM&Aを重ね、教育出版、環境生活、太陽エネルギー、素材、建設、食品、金融などの分野に進出した。しかし、6600億ウォンで買収した極東建設の経営悪化が続き、一昨年に買収したソウル貯蓄銀行の正常化にも3000億ウォン近くを注ぎ込んだが、経営難は解消されなかった。さらに06年進出した太陽エネルギー事業も不振で、資金不足が深刻化。

 昨年2月以降、浄水器最大手で稼ぎ頭の熊津コーウェイの売却を決定し、資金難を打開しようとした。しかし、法定管理申請で、同社売却も当面中断される。

 熊津グループの負債総額は9兆6000億ウォン。負債の内訳は、熊津ホールディングス3兆316億ウォン、極東建設1兆758億ウォン、熊津コーウェイが8776億ウォンなど主力企業11社で8億3000億ウォンを占める。