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2000/11/17

<随筆>◇川崎市の「居住支援制度」◇

 「いやぁ、家探しで苦労しましたよ」。韓国人の商社マンや留学生と話していると、決まってこの言葉が口からもれる。
 
 ▼外国人にとって日本ほど住居探しが難しい国はない。これを改善しようと、川崎市がこの春から「居住支援制度」を始めた。

 ▼川崎市は、外国籍市民の声を市政に反映するため、96年に全国で初めて「市民代表者会議」(初代代表・李仁夏氏)を設置したが、市に対するメンバーの要望で最も強かったのが「入居差別の撤廃」だった。これを条例化したのが「居住支援制度」である。

 ▼この制度は、市に2年以上居住する外国人と身障者、60歳以上の高齢者を対象に、市が入居する際に保証人を肩代わりするというものだ。利用者は市の紹介を受けて民間の保証会社と契約を結び、月額家賃の35%の保証料を払う。借り手が家賃を滞納したり、払えなくなった場合には、保証会社が支払うが、市がその分の損害を補償し、借り手の経済的負担はゼロとなる。

 ▼衣、食、住は人間が生活するうえで不可欠のものだが、とりわけ住居の確保は切実だ。アパートが借りられないという外国人にとって、こういった制度ができたことは大きな励みになる。

 ▼21世紀を迎えて、国際化がさらに進展し、外国人の数はますます増える。こういった時代に、「外国人お断り」では世界から取り残されてしまう。川崎市の制度が閉鎖的な不動産業界や保守的な家主の意識改革につながり、1日も早い入居差別撤廃が実現することを期待したい。(A)