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2001/07/20

<随筆>◇囲碁と韓国人◇

 いま、韓中日や欧米の世界7カ国が参加して日本で開かれている第14回世界囲碁選手権・富士通杯で、韓国のチョウ薫鉉9段と崔明勲8段が強豪を破り、8月4日の決勝戦に駒を進めた。

 韓国の人は碁が強い。ふと、ソウル五輪の前の年、米ロサンゼルスのコリアタウンを訪ねたときのことを思い出した。通りを歩いていると、「碁会所」の看板が目に止まり、思わず中に入ってみた。そこには日本の碁会所と変わらず、和気あいあいとコリアンたちが盤を囲む姿があった。

 「一緒にどうぞ」と誘われて仲間入りをしたが、ロスで韓国人と碁が打てるなんて、何とも不思議な気持ちがし、感慨無量であったことを思い出す。まったく歯が立たなかったが、うれしかった。

 周知のように碁は陣取りゲームで、ルールはいたって簡単。黒石と白石を交互に打ち、自分の領地を広げていく。単純だが、奥行きが深く、ストラテジー(戦略)ゲームの中では、対局観が最も重視され、大きな視野に立って戦術を進めないと勝てない。ちまちま、こせこせと隅の方ばかり気にしていては、「木を見て森を見ず」ということになり、どんでん返しを食う。

 韓国人は碁が好きだ。韓国に行って書店をのぞくと、棋書の多さにびっくりする。それだけ、囲碁ファンが多いのだろう。礼を重んじ、気宇壮大な韓国の国民性に碁というゲームがマッチしているのかもしれない。

 昨今、韓日関係は教科書問題や北方沖のサンマ漁などで悪化しているが、碁でいうなら、隅の攻防に終始しているようにみえる。森をみる対局観が大切だと思う。(N)