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2001/03/09

<随筆>◇韓炳三氏の死◇

 元国立中央博物館長で日本とのかかわりが深い韓炳三氏が急性肺炎のため4日、ソウル市内の病院で亡くなった。65歳だった。

 韓氏は、日本の古代史研究や研究者との交流のためたびたび来日した。講演も多く、昨年11月には朝鮮奨学会の100周年記念古代史シンポで、新たに発見された百済・新羅遺跡について研究発表したばかりだった。

 韓氏は、韓国初の考古学留学生として京都大学で学んだ経験がある。このとき、古代史の韓日共同研究が必要だと痛感したのが、その後の研究活動に大きく影響を与えた。国立中央博物館長時代には韓日共同研究の枠組みをつくり、同館に日本室を設置するなど、考古学交流に多大な功績を残した。

 平壌生まれの韓氏は、ソウル大学史学科を卒業したあと、国立中央博物館長、国立慶州博物館長、考古学研究会長、韓国文化財委員を歴任するなど、韓国考古学会の長老的存在だった。一見、政治家の風ぼうだが、学者らしいソフトな語り口が印象的に残っている。

 国際交流に顕著な貢献があったとして91年に日本の国際交流基金から賞を受賞したときの言葉が忘れられない。「歴史に学ぶためにも古代を明らかにする必要がある」。韓氏の考古学研究の原点だろう。それだけに、最近問題になっている日本の歴史教科書記述については心を痛めていたに違いない。

 考古学一筋の生涯であり、韓日交流のためにまだまだ活躍してほしい人だった。冥福を祈りたい。(M)