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2001/02/02

<随筆>◇二人の新閣僚◇

 出世指向的な人間でなく公益的な人間を育てたい――。副総理兼教育人的資源部長官に起用された韓完相氏の開口一番の言葉だ

▼韓氏は、韓国で反体制知識人として有名だった。朴正煕政権時代の70年代に彼の著「民衆と知識人」は、学生たちの密かな必読書だった。当時、「維新反対」で何度も連行されたり大学教授の職を解かれた経歴の持ち主である。

▼韓氏は、金泳三・文民政権の初代副総理兼統一部長官も経験した。野党は今回の起用について「急進的統一論で問題を起こした人物だ」と批判している。

▼新たに新設された女性部の初代部長に起用された韓明淑氏も政治的言動で逮捕歴がある。新婚6カ月で夫が「統一革命党事件」で捕まり、獄中13年間を支えた。本人も79年のクリスチャンアカデミー事件で1年6ヵ月間の投獄生活を舐めた。この2人の起用は、時代が変わればというか、政権が変われば攻守ところを変える典型だろう。

▼そういえば、ドイツでも社民党政権が誕生、かつての反体制活動家が要職を占めている。その一人、左翼の武闘派に属するフッシャー副首相兼外相の「前歴」を問題とする保守勢力から反発が起こっている。だが、世論調査では、70%が「辞任する必要はない」と答えている。

▼韓国現代史はイデオロギーによる親兄弟も反目させる左右対立で翻弄された。日本語翻訳が完了した大作「太白山脈」を読めば、その苦難に涙するだろう。新任の2閣僚には、そうした「現代の反目」も解く象徴として期待したい。(D)