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2003/02/21

<随筆>◇新春ヨロカジセンガク(新春雑考)◇ 韓国ヤクルト 田口亮一共同代表副社長代行

 新年がつつがなく明けて今年は日本も韓国も元旦は良いお天気に恵まれて、来る年の平穏を思わせるものでした。本当にそう有ってほしいと願いつつ「新春ヨロカジセンガク」と勝手に称して、去った年の出来事を振り返ったり今年の生き方なども考えてみたいと思います。行ってしまった年の事は深刻に考えても仕方が無いから簡単にすませましょう。

 2002年はモニモニヘド(何と云っても)6月の日韓共催のスポーツの祭典「ワールドカップ」だったでしょうね。「赤い悪魔」軍団の熱狂的な応援、開催両国の決勝リーグ進出、そして韓国代表の四位入賞と大成功を収めました。

 そろそろその熱が冷めた頃から盛り上がって来たのが第16代大統領選挙の予備選挙と12月19日に行われた本選でした。盧武鉉氏を支持する市民団体「ノサモ」が、応援団「赤い悪魔」とか反米示威の「チョップル(ロウソク)集会」とかの群れをなす心理状態の流行(まさに去年は若人が群れを成すことが流行でした)も取り入れた勝利だったナと感じたのは私だけだったでしょうか。

 まあ、こういうことで「無事大統領も決まり2002年も平穏裡に終わりました。」となればめでたい新年の幕明けだったのですが、中々そううまくは行きませんでした。ゆく年くる年にまたがってコルチコリ(頭痛の種)になってくれたのは、今度もまた、あの親愛なる北韓の首領任でした。アメリカが相当強気で立ち向かう姿勢なので助かってますが、本当の所全然腰の座ってない日本の外交なんかでは到底太刀打ちできません。首領ニムが逆ギレした時は一番被害を被るのは韓国と日本なんですから、このあたりのところをよ~く見極めて今後の成り行きに注目したいと思います。

 個人的次元に話を変えましょう。私は今年年男なのです(36才、48才、……後で分かります)。当然干支は羊なのですが、この羊と云う動物は普段は余り目立たず温和な動物として知られていますが、これが中々大したものらしいですね。羊に大きいと書いて「美」、羊に食と書いて「養」、羊に羽と書いて「翔」、どうです、昔の人はかなり羊の価値を認めていたようですね。私などはまだまだ考え方も未熟だし、欲も有るし、酒も飲むし、煙草も絶対止めないし、生臭さも残っているし(続ければいくらでも出て来ます)で、とても完成した60才の還暦を迎えたとは自分でも信じられません。

 そんな訳で今年も個人的には還暦を迎えたから何を成し遂げよう、という考えが何も無く、新春の随筆としてははなはだ不謹慎なのですが時の流れに身をまかせてテキトーに生きて行こうと思っています。その証拠に新正を終えた瞬間「オッ韓国には旧正があるんだぞ、ヤイッ!旧正の連休には日本に帰ってうまい魚を食ってバカバカ飲むんだぞ、ヤイッ!」と一人興奮してわめいているんですからこれはどう見ても還暦爺の考えることじゃありません。しかし世の中は所詮「色は匂えど散りぬるを我が世駄誰ぞ常ならむ――」じゃありませんか。皆さん今年も明るく楽しくやりましょう。
                  (本紙2003年1月17日号掲載)


  たぐち・りょういち  1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。