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2004/11/26

<随筆>◇済州島モッコ、チゴ(食べて打って)旅行◇                                                      韓国ヤクルト 田口亮一 共同代表副社長代行

 米国の大統領選挙も終わり、韓国での四大法案を巡る与野党の駆け引きも両党とも「モーいいよ疲れた」という感じで一段落を見て(見てないか)、それでもイラクでのテロとの戦いは一向に収拾がつく様子もなく、日本では相変わらずの日朝実務者協議・中国原潜侵入などでのたわけた外交、かたや衰えを知らない、私に云わせればノーテンキアジュマ(私の実姉を含む)達の韓流ブームと、人間の世界ではする事なす事「浮世は夢よ、只狂え」のモードに入ってますが、季節はトゥリムオプシ(間違いなく)移ろい変わってまいります。

 日頃から親しくして頂いている韓社長(韓国製缶協会々長)から、この度母校の成均館大学の名誉経営学博士号を授与されたので、これを記念して親知の7人(私を含む平均年齢64歳、この年齢は後々参考になります)を二泊三日の済州道モッコチゴ旅行に招待したいと云う誠に美味しいお話が舞い込みました。

 「招待・ご馳走・コンチャ(無料)」などの言葉には滅法弱い体質でありますことから、去る10月22日の金曜日、仕事を終えて午後7時30分の飛行機で総勢8人は済州道へと飛び立ちました。到着して第一日目の夜は西帰浦にある「香苑」と云う河豚専門店で、この店に着いたのはもう10時近い頃で、それからトラフグ刺身中心で骨付きのアラは熱湯を通して出てくるアラ煮風を三バイ酢で食すと云うフグチリとはいい難いものでしたが、いずれも美味でヒレ焼酒がすすみました。

 「ナヌッ、ヒレ焼酒?」これは私も初めての経験でしたがヒレ酒ならぬヒレ焼酎。あるんですねこれが。焼酎独特の甘味が消えて辛口好みの私にはうってつけの酒でした。8人の中にはごく普通に酒をたしなむ程度の方が3人、さてこの8人で空けた焼酎瓶がナ・ナント18本ですぞ!(ここで平均年齢64歳が効いてくるのです)。

 そして済州市、西帰浦市の中間に位置するナイン・ブリッジCCのコンドにチェックインしたのは深夜でした。翌日5時30起床でシャワーを浴びても酒の匂いが消えない酒体で、朝のコンナムルクッパプ。何のダシか良く分からんのですが(魚貝類には間違いない)あっさりして胃にやさしく一滴残さず平らげました。韓国の朝のクッパプは実に良いナァ。
 ここからは暫時チダ(打つ)方面ですが一週間後にLPGAを控えたこのクラブではその準備で忙しそうでしたが、天気は上々、景観も最高でした。午前中ワンラウンド、昼食後ハーフラウンドの合計27ホールを二日酔いのフラフラ脚で回ったのですからスコアの事には触れないで下さい。

 ここからまたモクタ(食べる)方面に戻ります。風呂に入ってひと休みしてから、ここのコンドのクラブ内で今度の旅行のメインの「タクンバリ(魚の名前)刺身」食べ放題パーティです。私も寡聞にしてタクンバリの名前は始めて聞きました。「エーッタクンバリ?セミョンバリ(毛じらみ)なら知ってますが…」と云って失笑を買いましたが、これは平目科の魚でなるほど平目の頭部に沢山の瘤がある一種の怪魚です。この魚は何故か済州道近海でしか獲れないそうで、しかし2㌔で50万ウォンと聞かされてひっくり返りました。

 この夜はタクンバリフェを堪能し翌24日の日曜日にワンラウンドチゴ(打って)、午後2時頃から空港近くのこれまた有名な食堂で太刀魚と鯖の塩焼きで、今度はフツーの焼酎を飲んで又、フラフラで午後8時に金浦に到着しました。日頃のストレスを解消するには絶好の済州道旅行でした。
 
 アッそうだ!済州道と云えば皆さんオクトミ(甘鯛)を想起されるでしょうが、タクンバリはとも角、太刀魚(カルチ)と鯖(コドゥンオ)の塩焼きは是非一度ご賞味下さい。余りの旨さにツーステップ踏むこと請け合いです。


  たぐち・りょういち  1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。