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2005/07/22

<随筆>◇中学生の日韓交流◇ 武村 一光 氏

 昨年10月西帰浦市を訪問した中学生36名の感想文が一冊にまとめられ手元に届いた。中学2年、14歳の感性が躍っている。どの生徒も訪問先・大新中学校の生徒の優しさ、積極的な態度、優秀な英語力を称賛、言葉は通じなかったが大きな感動を覚えたと述べている。全部を載せたいくらいだが、幾つか印象に残ったものを紹介したい。

 「僕たちは2002年にサッカーのワールドカップの行われた競技場の近くにある、私立の大新中学校に行きました。校舎には美術室や体育館の他に『英語室』と呼ばれるものがありました。そこには4、5人ずつ座れる扇形の机がありました。英語室の前の廊下は、英語のポスターや本、生徒のつくった英語の自分史などが置いてありました」

 いま鹿嶋市が進めている「まちづくり」、その中に「世界に羽ばたく人づくり」がある。その具体的活動が「国際交流の機会創出」や「英語を話せる教育の推進」などだ。この『英語室』の発見は今後の市の教育方針を変えていく起点になりそうな気がする。

 「英語の授業も日本の授業とは異なり、ALT(外国語指導助手)の先生が英語のみの会話で授業をしていました。教科書を使っていなかったことに驚きました。授業の進め方が違うと、個人の性格も変わるかもしれない、と感じました」

 授業の進め方と個人の性格を関係付けているが、たまたま英語の授業だったからこの程度で済んだ。もし社会科だったら、秀吉の朝鮮出兵、現代史の日韓併合や第2次大戦など授業内容そのものが両国間で大きな開きがあることを知る筈だ。そうしたら一体どんな感想が飛び出すのだろうか。考え過ぎかも知れないが気になるところだ。

 「韓国では、水道水を普通に飲んでしまうとお腹をこわすと聞いて驚きました。またご飯を食べに行くと必ずキムチが出てきました。学校の給食にも出てきました。日本では割りばしを使うのに韓国では鉄のはしを使っていました。環境にとても優しいと思いました」

 いかにも女生徒の優しい視点で書かれている。世界で最も軟水の国といわれる日本、一歩外に出れば殆どの国は硬水だ。生水を飲んだら腹をこわすのは当たり前、幸い今回はだれひとり水当たりにならずに済んだ。

 「言葉の通じない両国の生徒が一緒に学習したり、上手く交流することができるか内心不安でした。(中略)様々の交流活動を通して生徒同士が親しい関係を築くことができ、帰り際、別れを惜しむ光景も見られました」

 団長の校長先生の偽らざる感想だ。初めての海外派遣で多くを期待するのは無理だ。今後何年も継続する内に、何かが変わって行くに違いない。大いに期待している。

 いま、第2回目の派遣に向けて参加募集が始まったところである。


   たけむら・かずひこ 1938年東京生まれ。94年3月からソウル駐在、コーロン油化副社長などを歴任。98年4月帰国。日本石油洗剤取締役、タイタン石油化学(マレーシア)技術顧問を歴任。茨城県鹿嶋市在住。