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2005/07/15

<随筆>◇第2のBoA誕生?◇ 韓国双日 大西 憲一 理事

 日曜日の白昼、ソウルのど真ん中で日本の歌が高らかに鳴り響いた。演歌あり民謡ありバラードありで日本語のオンパレード。実は日本の国民的人気番組、「NHKのど自慢」が日韓友情年2005記念事業の一環として6月26日にソウル世宗文化会館で開かれたのです。

 独島問題、教科書問題からいまだ覚めやらぬ時期でもあり、参加者が十分に集まるか心配されたが、さすがカラオケ自慢のお国柄だけあって日韓の自称プロ歌手が600組以上も応募して事務局は嬉しい悲鳴をあげていた。わが社からも駐在員のN氏が新婚の韓国人愛妻と、S氏は韓国人同僚とのデュエットで応募し、書類審査にも揃ってパスして本戦前日の予選会に臨んだが、残念ながら予選参加250組のうち25組しか決戦に進めないという激戦の中で、善戦空しく敗れ去った。

 特にN氏は当社の韓国語研修生第1号として、延世大学から延辺大学まで踏破した語学の達人だが、のど自慢は日本の歌を原則としているため得意技が使えず残念!

 日曜日の本戦には小生も会場に駆けつけたが、広い世宗文化会館は超満員の盛況。ゲスト歌手は韓国でも人気の前川清と地元出身の金蓮子という実力者がそろい、宮本司会者が意外と流暢(?)な韓国語を駆使して盛り上げていた。

 ちなみに韓国にカラオケが流行りだしたのは80年代中頃だが、それ以前から、前川清の「長崎は今日も雨だった」は人気抜群だった。他にも「恋人よ」「ブルーライト横浜」、かなり古いが「ここに幸あり」、なぜか「ギンギラギンにさりげなく」が根強い人気を誇っていた。もっとも当時は公の場では日本の歌は厳禁で、もっぱらスルチブ(酒店)でのカラオケバンドに限られていたが。

 予選通過者25組のうち17組が韓国勢という圧倒的ホーム優勢で始まったが、トップバッターは揃いのハッピも艶やかな日本人女性5人による「朝の国から」。元気印のオバサマ方は、全員が韓流ブーム以前から「ヨン様」的韓国男性に魅せられて当地に嫁いで来た方々で、昨今の韓流スター追っかけオバサマとはひと味もふた味も違った本格派である。

 戦いも佳境に入ったところで、見覚えのある韓国人アジョシ(中年男性)がヒョーヒョーと舞台に上がってきた。韓国KBSの人気番組「全国ノレチャラン(のど自慢)」の名物司会者・宋海先生ではないか。NHKとKBSの「のど自慢」は大変よく似ているようで実はかなり違う。

 日本の優等生歌手のオンパレードに比べ、韓国は何でもありの個性派揃い。観客も一体になって踊る。宋司会者の八方破れ風司会は、今や芸術品。国民性の違いが如実に現れて面白い。肝心の歌唱力は断然、韓国が上。声量が違う。キムチパワーかも知れない。今回も韓国のうら若き美女がチャンピオンに輝いた。実力と美貌を兼ね備えており、第2のBoA誕生を予感させる。8月にはKBSが日本で公演と聞いたが、日韓は文化交流が完全に先行している。


  おおにし・けんいち 福井県生まれ。83-87年日商岩井釜山出張所長、94年韓国日商岩井代表理事、2000年7月から新・韓国日商岩井理事。昨年4月、韓国双日に社名変更。