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2005/06/10

<随筆>◇チョムシム イモチョモ(昼ごはんあれこれ)◇                                               韓国ヤクルト共同代表副社長代行 田口 亮一 氏

 今年も相変わらず時の流れが早い。「春よ来い早く来い」なんて云っていたらもう夏がやって来ました。朝夕と日中の気温格差が12度位あるので風邪もひきやすいし27度前後の会社の中は結構暑いのですが、うちの会社はかたくなに原則を守って6月に入るまでは冷房を入れません。今年はそれに加えて大騒音が仲間入りしました。

 と申しますのはビルの14階にちょっとしたサロン風のレストランがあるのですが、築8年に入った今年、ここをもう少しこぎれいにして、もっと儲けようというたくらみのもと大工事が始まりまして、私の部屋は13階にあり、もろにその騒音の被害を受けているということです。

 暑さと騒音に攻められまったくナッチャム(昼寝)が出来なくなり私の体はもうヨレヨレです。その14階には役員食堂ルームもあり昼食時間にはここに行けば主に韓食、たまには洋食と云うメニューで黙って座れば食後のデザートまでついて来るという他力本願的昼飯摂取法を何年もやって来たので、4月の工事初めから3カ月間、「サァ此処はもう無いんよ、あんた方勝手に外で食べなさいね」と突き放されても当初は只々途方に暮れるばかりでした。

 しかし2カ月を過ぎた現在、相棒のA氏と数々ある昼食のメニューの中から比較的意見が一致で通うようになったものをご紹介しましょう。

 美人コンテストの例にならってまず3位から。カルククス・アンド・パジョンです。会社のすぐ隣のビルの地下にありメニューはカルククスとパジョンとピンデトクのみ。ここのカルククスはアサリ貝と長ネギのみしか入っていない淡白塩味のすぐれもので浅漬けキムチがまことに美味しく二日酔いの翌日の定番です。(予算一人7500ウォン)。

 続いて2位はチェーン店「ミタレ」。ここはいわゆる日式の簡易食堂ですが必ずお寿司(機械作りか?)と、うどんなどのセットメニューで格安。ここのうどんのスープは本当に旨くて東京の「美々卯」のご主人が研修に来たとか来ないとか(ソルマァー:まさかぁー)。もうひとつここのお奨め品は「おいなりさん」。九州の方では「稲荷ずし」と云いますが甘ァい油揚げの味は日本のものと遜色ありません(予算一人6000ウォン弱)。

 そして我々の昼食ベストワンなるものはスンドゥブです。会社の裏手の坂道をトコトコ歩いて、突き当たりの2階が「元祖開城スンドゥブ」の店です。スンドゥブの種類が豊富で牛肉入り、貝入り、餃子入りも有ります。テーブルの上には竹カゴの中に玉子が山積みされていてスンドゥブの中に各自が玉子を1個入れなさいね、ということです。ご飯は一人分ずつ釜たきしてあり、このご飯の美味しさも格別です。(予算一人きっちり6000ウォン、玉子1個含む)。

 「人の昼飯の話なんか面白くも何ともないよ、勝手に喰え!」なんて、そんなに目くじらたてて怒らないで下さい。韓国のサラリーマンのいわゆる一般的昼飯談義、なかなか有意義だと思いますよ。


  たぐち りょういち 1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。