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2010/01/08

<随筆>◇カササギの吉凶◇ 産経新聞 黒田勝弘 ソウル支局長

 今年の干支はトラだが、韓国で新年にもらう年賀状には、その年の干支の動物のほか、鳥のカササギをあしらったものが多い。カササギがうれしい便りをもたらす“吉鳥”とされているからだ。韓国の国鳥でもある。

 いわゆるニュースというのは、事故や事件などだいたい不幸な話が多い。いろんな紛争や戦争もそうだ。だから新聞記者というのは「人の不幸を商売にしている」と皮肉られる。今年はぼくの商売はともかくとして、個人的にはぜひいいニュースを聞きたいものだ。

 で、カササギはカラス科で日本では「カチガラス」ともいわれている。これはカササギが韓国で「カッチ」ということからきている。日本では北九州の一部(佐賀県あたり)にしかおらず、本来は朝鮮半島の鳥ということから、そんな名前になったものと思われる。

 例の真っ黒なカラスより少し小ぶりで、尾が長くスマートだ。色もお腹や背の一部が白く、黒い羽には青い光沢があって結構、美形である。同じカラス科なのに、どこか憎らしくて日本では“凶鳥”になっているカラス(ちなみに韓国語ではカマグィ)に比べると可愛いらしい。韓国の冬、高い枯れ木の上のほうに枯れ枝で巣をつくっているのがよく見られる。韓国の風物詩である。

 ところがこの美しいカササギにも難点がある。姿はいいのに声がよくないのだ。好意的に聞けば「カッチ」の名前にあるように「カッ、カッ」とも聞こえるが、実際は「ギャー、ギャー」と鳴く。何羽も集まっているとその声は実にうるさく、声ではカラスの方がましである。“吉鳥”だというのに「天は二物を与えず」か。

 ところで韓国には「カラスはいない」と思っている人が多い。日本のように街でカラスを見かけないためだが、韓国人もそう思っているようだ。

 そしてこの話が出ると決まって「カラスを食べると体にいい、精力がつくといってみんな食ってしまったから」という話になり、その場に日本人がいると、これまた決まって「え、ほんと?じゃ、日本でカラスを捕まえて輸出したらどうだろう」となる。

 しかし韓国にもカラスはいる。ぼくは趣味の釣りで韓国の田舎によく行くから知っている。群れで見ることもある。ただ日本ほど多くないのは、カササギとの勢力分布で押されているからかもしれない。一方、“吉鳥”のカササギが近年、“害鳥”になっているというニュースがある。高い木に巣を作るため、電柱や送電塔にも巣を作り、それが送電障害など事故の原因になっているというのだ。電力会社では巣の除去にかなりの予算を使っているとか。

 その結果、カササギ駆除の話まで出ているのだが、カササギ退治の最もいい方法を教えます。「カササギを食うと精力がつく」という話を広めればいい。


  くろだ・かつひろ 1941年大阪生まれ。京都大学経済学部卒。共同通信記者を経て、現在、産経新聞ソウル支局長。