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2011/08/26

<随筆>◇外国人も被災地に・・・◇ 康 玲子さん

 岩手県には6210人(09年の統計)、宮城県1万6091人(08年末)、福島県1万1099人(10年末)―何の数字かというと、外国人登録者の数である。各県のホームページで別々に調べたので年度は不揃いだが、ともかくも東北の被災地にはこれだけの外国人が住んでいることが分かる。

 それぞれの県の、その時々の人口と比べてみると、岩手県では人口の0・46%、宮城県は0・69%、福島県0・55%が外国人という計算になる。違う年度だがあえて足し算をし、合計で考えてみると、3県の人口の0・58%が外国人だ。国籍別に見ると、岩手県の場合、多い順に中国3053人、韓国または朝鮮1106人、フィリピン922人。宮城県が中国7222人、韓国または朝鮮4478人、フィリピン1014人。福島県では中国4771人、フィリピン2236人、韓国または朝鮮1918人である。

 これらの人達の中には震災後、自国に帰ったという方もおられるだろう。だが、在日韓国人朝鮮人の場合、長く日本に住んでいて、もはやここがふるさとだという人が多い。他にも日本に仕事や学校があったり、日本人と結婚していたりして、ここを離れることは考えられないという人は多いのではないかと思う。

 この外国人の数を、私は決して少ないとは思わない。0・58%というのは震災前の数字ではあるが、地域に172人の人が住んでいたら、一人は外国人だったということになるのだ。

 私にはやはりこれらの人々が気がかりだ。津波の被害にあった人達もいただろう、今も避難生活を余儀なくされている人もいるだろう、地域の中で孤立している人はいないだろうか…。

 決して外国人のことだけを心配しているわけではない、被災地全体のことを心配しているつもりだ。けれどその中で、外国人はやはり弱者の立場になりやすい存在なのではないか。その外国人が大切にされているなら、被災者だれもが大切にされていると言えるのではないか。

 ところが、どうしても外国人に関する情報が入ってくることは少ないのだ。172人に一人住んでいたのなら、ニュース172回のうちの一つは外国人の様子を伝えてほしいと願うのだが。そしてなんだかさびしいのだ。「ガンバレ、日本!」と言うとき、私達外国人の存在はすっかり忘れられているようで。

 「私達もいますよ!」と、そう言いたいのだ。被災地には外国人もいて、同じように今苦しい思いをしている。そして各地にも私達外国人がいて、やはりこのたびの災害にこんなにも心を痛め、被災地のために何かしたいと考えている。地震、津波、原発事故を経て、新しい社会を作っていこうという今、ともに課題を分かち合い、力を出し合いたいと願っている。どうぞそんな気持ちを知っていただきたい。私達外国人も、まさにその「新しい社会」のメンバーなのだから。


  カン・ヨンジャ 1956年大阪生まれ。在日2.5世。高校非常勤講師。著書に『私には浅田先生がいた』(三一書房、在日女性文芸協会主催第1回「賞・地に舟をこげ」受賞作)。