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2014/11/21

<随筆>◇キムチは韓国語?それとも日本語?◇ 呉 文子さん

 最近は、どこのスーパーに行ってもキムチコーナーが常設されているので、韓国渡来の食品ということを知らない人もいるようだ。キムチは韓国語?それとも日本語?と訊かれたのには驚いた。

 キムチの他にチジミやビビンパプ、焼き肉などはもっともポピュラーだ。先日あるレストランに入ったところチョレギ(和え物)やスントウブチゲなどというメニューがあったのには二度驚いた。どの料理にもニンニクを利かせているので、最近は「ニンニク臭い」日本人にも多く出会う。嫌韓、反韓などと騒いでいるにもかかわらず、食文化はどんどん生活に浸透していて国境がなくなって久しい。好ましい現象だ。

 韓国からのみやげでもっとも好評なのはキムチだそうだ。海外輸出向けにすてきにパッケージされているからかもしれない。夫が亡くなってからは全くキムチを漬けなくなったので、私もキムチのみやげはとても嬉しい。

 母が若い頃漬けていた白菜キムチは具沢山で、イカやアミや牡蠣やしこいわしなどの自家製の塩辛などを入れたコクのある味だったが、韓国からみやげにもらうキムチとはひと味違う。韓国産は深いコクは感じないが、白菜がシャキッとしていて母のキムチに比べれば淡泊でマイルドな味だが、それなりに美味しい。水分が少なくてシャキッとした食感もいい。キムチに入れる具はその家によっても違うが、唐辛子、ニンニク、大根と魚介類の塩辛は必ず入れる。懐具合によっては、イカ、牡蠣、タラ、あわびなどの魚介類や松の実などのナッツ類、栗、棗や柿などの果物も加わる。それらの具がたくみにブレンドされ、発酵してウマミのあるハーモニーを醸し出すのだ。まるでオーケストラが奏でるシンフォニーのように。

 日本ではぺチュ(白菜)キムチとオイ(きゅうり)キムチ、カクテキ(大根の角切り)などがポピュラーだが、キムチには一夜漬けからひと冬保存のものまで含めると、70~80種類はあるといわれている。韓国ではキムジャン(キムチ漬け)・ボーナスまで出るお国柄、キムチ漬けは晩秋の風物詩ともなっている。キムジャンは昨年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録決定された。

 料理の塩加減や出来上がりのタイミングとかに気配りできる人のことを「美味しい手」の人と言うそうだが、キムチ漬けに「美味しい手」の女性たちが競いあうシーズンでもある。でも最近韓国でもデパートで買ったキムチがそのまま食卓に載っている家庭が多くなり、「美味しい手」をもった女性よりもチマ・パラム(スカート風=転じて教育ママを意味する)の強い女性たちが威力を発揮する社会になっているようだ。私の日本の友人も漬物は買うものと思っている。韓国も日本も女性の生き方が変わったのだ。いまやキムチは社会を映す鏡といったら大袈裟だろうか?


  オ・ムンジャ 在日2世。同人誌「鳳仙花」創刊(91年~05年まで代表)。「地に舟をこげ」編集委員(1012年終刊)。「異文化を愉しむ会」代表。著書に「パンソリに想い秘めるとき」(学生社)など。