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2016/04/29

<随筆>◇日本民藝館を訪ねて◇ 呉 文子さん

 東京・目黒の駒場に日本民藝館が創立されて80年を迎えた。この記念すべき節目の年に、創立者柳宗悦の妻・柳兼子の生涯をDVD「ドキュメンタリー兼子」で辿る機会に恵まれた。

 兼子は1892年に生まれ1984年92歳で亡くなるが、日本近代の声楽法を確立したとされる不滅のアルト歌手。肉体の衰えや限界に挑戦しながら85歳まで現役でコンサートを開いた稀有な声楽家である。朝鮮との関係で特記すべきことは、植民地下の朝鮮でたびたびリサイタルを開き、ソウルの「景福宮」の裏にある「朝鮮民族美術館」開設資金にするなど、夫の活動を物心両面にわたって支え続けたことは広く世に知られる通りである。


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