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2017/05/12

<随筆>◇過ぎ去った日々を振り返りながら◇ 呉 文子さん

 今年も「母の日」が近づいてくる。5月は祝いごとの多い月、「こどもの日」、娘の誕生日、長男の誕生日、「母の日」と続く。息子たちが家族をもって離れて暮らすようになってから、ことに娘が亡くなってからは一緒に祝い膳を囲むこともなくなり、海外赴任の長男からはお祝いメール、次男からは花束や鉢物が届くようになった。

 狭いわがマンションのベランダには、毎年増え続ける花鉢でびっしり。薄紫の凛としたクレマチス、真っ赤なブーゲンビリア、清楚な純白のクチナシ、七変化するアジサイ…などなどを眺めているだけでも気分を浮き立たせてくれる。水やりしながら、朽ちている葉っぱの裏をのぞいて虫取りをしたり、育ちが悪いと肥料を加えたり、じっくり時間をかけて観て回る。私にとって至福のひととき。陽当たりの良いせいもあるが丹精して育てた分、期待にたがわぬ美しい花を咲かせてくれる。


つづきは本紙へ