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2018/03/02

<随筆>◇フェラガモのシューズかバレエの発表会か◇ 金 珉廷さん

 「な、7万円ですか」と顔が引きつったままだ。「これでも他の教室より安い方ですよ」と先生はおっしゃる。

 娘は昨年からバレエ教室に通っている。年に一度の発表会を迎え、参加費だけでおよそ7万円だという。バレエを始めたきっかけは、第一に、本人が希望していたから。第二に、表現方法を学んでほしいという親の希望から。言葉では伝えきれない思いを何か別の手段で補うことができればと思ったからである。第三に姿勢矯正のためである。猫背になりがちな娘の姿勢がまっすぐになることを期待している。どんなに良いこと尽くめでも、7万円は高い。

 昨年の誕生日、自分へのご褒美にフェラガモのフラットシューズを買った。アウトレットとはいえ、そこそこ高かった。イタリアで、靴職人の手によって320もの制作過程を経て作られる靴への憧れもあったが、ミーハーな性格も私をショップへと後押しした。履き心地はいつも履いている靴より、楽ではなかったが、心だけは大いに満たされた。

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