ここから本文です

2020/04/10

<随筆>◇思い出のなかの折々の言葉◇ 呉 文子さん

 今年も雲南黄梅が春を待ちわびたかのように一斉に咲いた。ケナリ(連翹)に似た花だが、葉が芽吹いてその後に愛らしい花を枝いっぱいにつけてしだれ咲く。ケナリは花が散った後に若芽が吹く。

 夫が逝っていつのまにか8年目の春を迎える。雲南黄梅が咲くころになると、花に誘われるように、夫との思い出が再現フィルムのように蘇ってくる。

 雲南黄梅は、夫が職場の同僚から分けてもらい、挿し木で殖やし、我が家にも韓国の墓地にも移植した。当時、夫の故郷ではこの花を知る人はいなかった。名前さえ知られていない珍しい花。いわば夫が「花の通信使」ともいえる。


つづきは本紙へ