ここから本文です

2021/06/25

<随筆>◇高校生との対話④◇ 康 玲子さん

 毎年数回ではあるが、高校の人権学習の時間に講演をさせていただく。去年から今年は、コロナのため文化祭、体育祭、修学旅行などの行事が中止/縮小される中で勉学に取り組む生徒たちの気持ちを思いつつ、また学校が人権学習の機会を確保してくださっていることに感謝しつつ、お話をさせていただく。

 私自身が子ども時代に国籍を隠して学校生活を送っていたこと。そのために自己を否定してしまっていた、本当の友達ができなかった、将来に希望を持てなかった、という話から、外国人もともに平和をつくる仲間として認めてほしい、関心を持ち、「差別をしない」だけでなく「差別をなくす」人になってほしい、という話をする。

 話の基本はずっと変わらないが、近年はヘイトスピーチの問題が心配だ。特に、今の高校生にはインターネット上にあふれる情報がどんなに大きな影響を及ぼしているかを考える時、強い危機感に駆られる。そこでこんな話をする。

 世界人権宣言第一条には「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」とあります。赤ちゃんが持って生まれた属性のままに、人は尊重されるべきで、それが人権というものなのです。

 誰にとっても、民族や国籍などは、生まれる前に自分が選んで生まれてくるというものではなく、また努力によって決まるというものでもありません。自分の選択ミスや努力不足で失敗したなら、つらいけれど納得はできます。やり直しもできます。でも選択も努力もできないことのために、何か損をしたり、つらい目にあったり、悲しい思いをしなければならないのだとしたら、その人に責任はありません。社会が悪いのです。変えていかなければいけません。


つづきは本紙へ