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2022/07/29

<随筆>◇「外登を」の苦い思い出◇ 海龍 朴 仙容 相談役

 つい数日前の話である。夜の九時を回った頃、家の前が騒々しく、表に出てみると、パトカーが7台、赤い点滅をしたまま列になって停まっていた。尋常じゃない。手向山公園前の登り階段付近を見ると、警官に取りかこまれた老人が激怒してわめいている。老人の家族たちもいて、凄まじい形相で警官と対峙していた。

 老人家族は、息子が経営する韓国食品普及処「海龍本店」の隣家の人たち。息子は店の二階に住んでいる。血の気の多い息子のことが心配で、様子を見に近づいた。揉めている老人は在日韓国人二世、民団福岡県地方本部の議長まで経験した人物である。80歳を超え、仕事も組織活動も引退、今では穏やかな生活をしている。

 少し付近の住環境を説明する。息子の家の隣がその老人の家、それから一軒、日本人家族の家を挟み、我が家がある。在日が三軒並んで住んでいる。その通りは在日の集落と言えなくもない。治安を守る側から見れば、要警戒地域なのかもしれない。

 そんなことを勘ぐった。もめ事の始まりは他愛ない。老人は昼間、手向山公園の登り道の美化のために、5時間ほど雑草取りをしている。それを終えて帰宅したが、美観を損なう枯れ木があったことが気になっていた。


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