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2000/09/22

<総合>韓国経済に第2のIMF警戒論

 原油価格高騰、半導体価格下落に続くフォードショックが韓国経済を痛打している。すでにその危険信号は、株価の大幅下落となって現れており、「第2のIMFショック再来か」といった不安心理も再び頭をもたげている。事態を重視した金大中大統領は、経済不安解消の緊急対策を内閣に指示し、財政経済部は備蓄原油放出など「非常経済運営対策」の樹立に着手した。いま韓国経済に何が起こっているのか。

本紙客員ライターの河東秀氏は、「大変なことになっている。マーケットのシグナルかも知れない。日本ではあまり騒がれてないが、世界は実質第3次オイルショックの状態だ。石油に弱い韓国に最初に現れたのかも知れない。そうでなくとも韓国は半導体国家なのだから、チップ価格に経済が左右される。その価格が下落傾向にある上に、今回のフォードショックだ。言われているほど経済の構造改革が進んでいないと市場は判断したのだろう」
と現状を分析した。
 最近訪韓した韓国経済専門家の笠井・秀明大学教授も、「原油高、大宇自動車の処理遅れが韓国経済に大きなダメージになっているとの見方が広がっている。インフレ不安もある。今後、公共料金引き上げとなって反映されるだろうし、秋夕(旧盆)明けの韓国経済の舵取りは難しい」と憂慮した。
外部要因のせいだとはいえ、原油高騰、半導体価格下落は外部要因だとはいえ、対応を一歩誤ると重大な事態を引き起こしかねない。特に、フォードの買収中止による大宇自動車の整理が遅れることは、IMFショックの引き金となった起亜自動車の二の舞になりかねないので、買い手を決めることが緊急の課題だ。
原油価格は今年はじめからジリジリ上昇していた。OPEC(石油輸出機構)の増産合意後も高止まりしており、米テキサス中質油は1バレル37㌦まで急騰した。高騰の原因として、イラク・クウェート間の緊張や景気好調による米国の過剰消費などの要因が指摘されているが、原油をほぼ海外依存している韓国としては、第2次オイルショックによる大幅なマイナス成長(80年)の悪夢が蘇ってくる。財政経済部試算によると、年間導入原油価格が平均35㌦に上昇すれば、来年の経済成長率は当初予想の6%から4%以下に下がり、経常収支は60億㌦の黒字から50億㌦の赤字に転落してしまう。消費者物価も3.2%上昇から5%以上に所ウン跳ね上がる。
 国際市況の変動によるものとはいえ、半導体価格の下落も影響が大きい。半導体は韓国最大の輸出品であり、全輸出の20%を占める。その最大メーカーのサムスン電子株に対する外国人投資家が最近逃げ出している。下落が継続すれば景気急冷ということになりかねない。
 フォードショックはある意味でもっとも深刻だ。大宇グループが解体されて1年が過ぎた。だが、まだ整理は道半ばであり、大宇自動車が早くフォードに引きとられ、正常化すしてほしいという期待が大きかった。それだけに期待を裏切る突然の買収中止は大きな衝撃を与え、総合株価指数を1日で50ポイント以上も下落させる大きな要因となった。今後大宇自の売却が遅れると対外信任度低下は避けられない。株価が下がるだけでないく、外為も1㌦=1131ウオンとウオン安に振れ、金利は上昇するなど3大金融指標が大きく揺れている。
 このような環境激変に対して、「第2のIMFを防ごう」というキャンペーンがマスコミの間にも展開されている。専門家の間からは、高原油を国内価格に反映するとの政府方針に対して、庶民生活や企業に及ぼす影響を考慮すれば、政府が一定部分を吸収すべきだという指摘が多い。だが、国内価格に反映してエネルギー節約型産業構造への転換を誘導すべきという意見ある。
 大宇自の処理については、「安価で売却するのは国富流出なので慎重をきさねばならない」という指摘も一部であるが、「もう論議の段階ではない。早急に処理すべきだ。時間がかかるほど費用がかさみ、対外信用は失墜する」という意見が圧倒的に多い。政府の総合的な対策が急がれる。