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2000/07/28

<総合>和解と協力、実践段階に あすから南北閣僚級会談

 韓半島の緊張緩和と平和定着、南北間の交流・協力へ向けて具体的に動き始めた。29日からソウルで始まる南北閣僚級会談は、その重要な当局者会議であり、金大中大統領と金正日総書記が署名した南北共同宣言を実践に移す大きな役割を担っている。北朝鮮からは長・次官級5人を含む35人の代表団が乗り込むなど前例のない意気込みだ。バンコクでの積極的な外交攻勢と併せ、今回の会談でどんな結果を出すのか、世界の耳目が集まっている。

 この南北閣僚級会談で扱うべき問題は数多い。まず、南北共同宣言で合意した項目の誠実な履行だ。具体的には、1統一問題の自主的解決2韓国側の「連合制」と北朝鮮側の「低い段階の連邦制」間の共通性協議3離散家族問題など人道的問題4経済、社会、文化、スポーツ、保健、環境など諸分野での交流・協力5金正日総書記の答礼訪問問題の5項目だ。

 原則的な合意は南北頂上会談で見た通りだが、具体的に詰める段になればお互いの差異点が表面化するなどいろんな問題が生じかねない。この「総論賛成各論反対」をどう調整し、共同宣言を実践に移すレールを敷くのかが最大のテーマだろう。

 韓国側では、統一問題の解決には時間がかかるので、中長期的に取り組む考えだ。代わって、実践し易い経済協力など南北の交流・協力分野を最優先順位に置いている。北朝鮮側も経済協力推進に異存はないが、南北頂上会談以降、メディアなどを通じて統一問題を強調してきた点に照らして、優先順位をめぐって衝突する場面が出てくる可能性も排除できない。

 経済協力問題では、いくつかの事業で合意が見られそうだ。まず、休戦線をはさんで寸断されているソルウ-新義州を結ぶ京義線20㌔区間の復旧事業。韓国側ではすでに復旧のための具体的な計画を立案済みだ。また、毎年のように洪水被害をもたらし、北朝鮮不作の要因にもなっている臨津江治水事業も早期推進に異論はない。さらに、経済界の北朝鮮進出を促進するため、投資協定、2重課税防止協定、清算決済などの保証措置も前進するものと見られる。

 スポーツ交流も進展が期待できる。シドニー五輪での共同入場行進についての具体的検討のほか、サッカーのワールドカップ分散開催問題についても意見交換がなされそうだ。

 南北離散家族問題については、8月15日から3泊4日の訪問団交換が決まっており、28日にも再会を希望する各100人の名簿交換を行う予定だが、これを展示効果に終わらせないため、面会所設置場所や時期問題などに決着をみたいと韓国側は期待している。

 年内ないし来春説もある金正日総書記のソウル訪問時期も論議対象になりそうだが、結論は出にくとみられている。北朝鮮側は韓国側の今後の経済支援などと連携させて決めたいと考えているからだ。南北共同宣言からは抜け落ちている軍事問題については、軍事ホットラインの設置などが協議される見通し。また、連絡事務所の相互設置が実現するかも注目点だ。閣僚会談の定例化、各分野ごとの専門協議の設置など、今後の南北協議の枠組みも具体化すると期待される。

 <解説>
 この1ヵ月あまり、韓半島に世界の耳目が集まっていた。29日からの南北閣僚級会談がどんな成果を出すのかも大きな関心事だ。また、あっと驚くような素晴らしい合意を期待したい。何よりも、「協議はするが実践は先送りする」といった従来のパターンを繰り返さないよう、南北とも真剣な取り組みが求められる。

 1974年の7・4南北共同声明からでも26年の歴史を重ねてきた。韓国密使が何度も北朝鮮を訪問してきたし、北朝鮮の総理級の訪韓もなされた。南北対話の歴史は長いものがあるが、いずれも失敗に終わっただけに冷ややかな目があるのも忘れてはならない。

 92年に発効した南北基本合意書の教訓を甦らせる必要がある。その合意書には双方の総理が署名、南北和解のための政治文科委、不可侵履行のための軍事文科委、交流協力のための交流協力文科委を設置した。だが、実践されたものは何もなかった。それこそ時間を浪費した机上の空論にほかならなかった。

 双方のトップが合意したのである。再び同じようなことが繰り返されるならば世界の物笑いになることだけは肝に銘じて協議に臨むべきだろう。具体的に前進させてほしい。