ここから本文です

2001/06/08

<総合>民団主導 平和銀行設立機構が発足

  • sogo_010608.jpg

    仮称・平和銀行設立計画を発表する鄭進・設立推進本部長(中)、金宰淑・設立推進委員長(右)、崔相龍・駐日大使ら

 相次いで経営破たんした在日韓国人信用組会協会(韓信協)加盟組合の受け皿となる在日銀行設立委員会が7日発足した。在日韓国民団が中心となり、駐日韓国大使館がサポートする形で設立したもので、委員長に金宰淑・民団中央本部団長、今後活動の事務局的な役割を果たす推進本部長に鄭進・民団長野本部団長(長野商銀会長)を選出した。この日、都内のホテルで金宰淑委員長、鄭進本部長、崔相龍駐日大使らが参加して在日銀行設立推進計画について記者会見した。計画によると、設立委員会は6月中に資本金300億円の出資を募り、7月初めに金融庁に認可申請を行う。銀行免許を受けて9月から新銀行の営業を開始するというスケジュールだ。

 設立委は、経営破たんした在日信組のうち資産規模が大きい関西興銀、東京商銀、京都商銀、福岡商銀などから事業譲渡を受け、地域在日商工人の資金調達を助けることを第一義的な目標としている。この4信組だけで1兆円を超える資産があり、これは日本の地方銀行級の規模だ。

 問題はこのように資産規模が大きいだけに、自己資本比率6―6・5%の受け皿銀行をつくるためには750億―800億円の資本金が必要となる。これだけの資本金を短期間に集めるのは事実上不可能であり、まず300億円ほどで認可申請し、後で増資して充当する形をとる。この2段階方式の許可を得るため韓日当局間の水面下の交渉が行われたという。

 第一段階で韓国政府は韓信協に預け入れている334億円のうち100億円を支援し、残りは増資時に支援する計画であり、一方の日本金融当局も公的資金1兆円ほどを投入する計画といわれている。設立委は関西興銀などの健全資産だけを引き継ぎ、不良債権は公的資金で相殺されることになる。

 また、人材の面では銀行経営の健全化をはかるため、在日同胞から実務に明るい適任者を探しており、日本など外国にも門戸を開放する方針だ。二次破たんを避けるため、出発点から経営の透明性が求められている。

 今回は韓国政府が資金支援を約束しており、日本金融当局からの協調も得たといわれることから、迷走を続けてきた在日銀行構想は実現へ向け大きく前進した。だが、必ずしも楽観は許されない。金融当局は銀行設立の認可基準として資本金と人材を最も重視しており、特に資本金が足りない場合は許可しないしない立場だ。韓国政府が支援するといっても全額支援はできない。在日社会からどれだけの資金が集まるかが鍵を握っている。

 一方、韓信協は今回の銀行化構想に協会としては参加しないが、各加盟組合には自主性に任せている状態だ。銀行が設立され軌道に乗れば今後合流していく可能性が高い。また、韓日銀行設立委員会は、金融庁に提出した認可申請をまだ取り下げていないが、事実上その役割は終わったとみられている。同委の関係者も「今後は民団主導の銀行設立の動きを見守っていくことになる」と述べている。金融当局では、「在日銀行については在日社会での合意形成が必要だと求めてきたが、今回は大使館も全面的にバックアップしており、目立った反対意見もないようだ」として前向きに受け止めている。

 今回の新銀行構想は事実上最後のチャンスだが、民団が音頭をとり、大使館が後押しする設立委員会が今後どれだけ在日社会で求心力のある活動を展開できるかに成敗がかかっている。