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2002/11/29

<総合>がっぷり四つの李・盧両候補 保革と新旧の決戦

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    李会昌候補㊧と盧武鉉候補の選挙ポスター

 5年に一度の韓国大統領選挙が熱戦の火ぶたを切った。28日までに中央選挙管理委員会に候補者登録を終えた各候補は街頭に繰り出すなど選挙戦は早くも過熱化している。今回の選挙は与党・新千年民主党の盧武鉉候補(ノ・ムヒョン、56)=写真・右=と最大野党・ハンナラ党の李会昌候補(イ・ヘチャン、67)=写真・左=ががっぷり四つに組んだ「保革の戦いと新旧の戦い」となっており、世代と路線の対決を鮮明にしている。来月19日に投開票されるが、大接戦となりそうだ。

 盧・李両候補以外に立候補を届け出たのは第3の候補といわれる民主労働党の権永吉候補、ハナロ国民連合の李漢東候補、社会党の金栄圭候補、無所属の張世東候補ら。

 盧・李対決の中で、国家保安法廃止や兵力20万人削減、富裕税賦課など急進的な100大公約を掲げた権候補がどれだけ票を伸ばすのかも注目点だが、最大関心事は大統領に最も近い盧・李両候補の今後の戦いぶりだ。

 李候補はは26日のテレビ討論で「当選すれば早期に、金正日総書記と会う用意がある」と述べ翌27日の公示後の第一声で「腐敗した民主党政権で5年間堕落した人たちは新政治を握る資格はない」と盧候補を批判。一方の盧候補は27日の第一声で「旧時代の古い政治を確実に清算、国民統合の時代を開く」と強調した。


 ◆ 両候補の強みと弱み

 「李候補の弱点はすなわち盧候補の強みとなり、盧候補の弱点は反対に李候補の強みになる」といわれている。まず、李候補は院内過半数を占めているハンナラ党の総裁として過去5年間統率し、党勢を拡大している。また、最高裁判事出身で清潔感がある上に国務総理、監査院長を歴任するなど豊富な国政経験がある。これが有権者に安定感を与えている。

 一方の盧候補は、貧農出身で苦学の末に司法試験に合格したヒューマンストーリーと、人権派弁護士として庶民の味方のイメージが強くあり、原則を曲げず政党改革にも取り組むなど新しい政治家として登場。鄭夢準氏との候補単一化も実現するなど大胆な行動力が評価されている。

 双方の弱点を挙げれば、李候補は人的・政治的に保守であり、貴族イメージがやや負担になる。一方の盧候補はレームダック化し息子らの腐敗疑惑が問題になっている金大中大統領の後継者であるという点から逃れることはできない。
 では両候補は相手候補の弱点をどうみているのだろうか。盧候補は李候補の冷戦的思考が問題だと指摘、「南北関係にわれわれの運命と未来がかかっている状況で対決的姿勢をとる李候補に国を任せることはできない」と主張。経済政策でも、大企業規制緩和、法人税引き下げ賛成、出資総額制限緩和など大企業優遇政策は既得権を保護するものだと批判している。

 これに対して李候補は盧候補を金大中政権の亜流であり、現状維持勢力に他ならないと指摘、「急伸的で不安な勢力と安定的かつ合理的で経験と経綸のある勢力間の対決」という図式をつくりあげている。さらに「財閥解体など過去の急進的な発言や危機管理能力の不足は盧候補の致命傷になる」と決め付けている。


 ◆ 正反対の支持基盤

 両候補の支持基盤は全く正反対である。まず世代をみると、李候補は50代、60代以上で支持が強く、逆に盧候補は20代、30代の若手や40代の中堅世代に人気が高い。韓国日報の最近の世論調査によると、李候補は50代で47%対38・8%、60代以上で53・4%対33・5%と盧候補を大きく上回る支持を得ている。逆に盧候補は20代で51・9%対28・2%、30代で47・8%対35・6%、40代で54%対31・8%と李候補を圧倒している。

 地域的には、李候補が嶺南(慶尚道)と江原道、盧候補は湖南(全羅道)とソウルを主要支持基盤にしている。世論調査でも大邱・慶尚北道の52・6%、釜山、蔚山・慶尚南道の52・1%が李候補を支持。盧候補はこれら地域で36・2%、29・9%に過ぎない。逆に湖南では83・6%の圧倒的多数が盧候補を支持、李候補支持はわずか4・3%だ。ソウルでは53・%対33・8%で盧候補、江原道は50%対35・3%で李候補優勢となっている。この世論調査にもみられるように今回も地域対立は解消されていない。

 中央日報の世論調査によると、盧候補の支持率は42.7%で李候補の35.2%を上回っている。ところが、当選可能性は李候補が57.7%で盧候補の29.4%を大きく上回っている。


 ◆ 注目のTV合同討論会

 各候補の選挙戦でメディアのウェートも大きい。そのハイライトは放送討論委員会界が決めた3回の合同討論会だ。参加資格が前回の国会選挙で5%以上、また世論調査で5%以上の支持などが条件になっているため、両候補以外に権候補しか参加できないが、各120のこの討論会は世論に大きな影響を及ぼすと見られている。

 第1回目は12月3日(経済問題)、次いで10日(政治)、16日(社会・文化)の順に開かれる。選挙管理委員会によると、群小政党及び無所属候補との公平を期すため別途1回の討論会を開催することを検討中。

 今回の投票率は前回の80%を上回りそうで、中央選管委の世論調査では88.9%の国民が投票すると回答。80%台だと、当選圏は140万票とみられる。