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2002/09/27

<総合>朝中国境の新義州を経済特区に

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    ■新義州市の概要■
    面積 : 180平方㌔㍍ 人口 : 34万人 年平均気温 : 8・8℃ 年平均降水量 : 1,066㍉㍍
    行政区域 : 35洞・13里 主要生産 : 機械・化学・履物・化粧品

 北朝鮮はやはり大きく動き出したようだ。朝日首脳会談に続き、今度は中国との国境の町、平安北道の新義州を特別行政区域に指定、経済特区として開発する。11年前の羅津・先鋒経済特区指定と違って、今回は「新義州特別行政区基本法」を制定、独自の立法、行政、司法権を付与するという画期的な内容だ。さらに、その特別行政区の初代行政長官にオランダ国籍の中国人、楊ビン氏(39)が任命された。また立法会議は半数以上を外国人とし、司法府のトップは欧州人を当てるという。中央政府は外交を除いて特区の活動に関与せず、自治権を与えるという「一国二制度」を認定した。このような北朝鮮の香港をめざす試みは内外の強い関心を集めている。


 ◆画期的な基本法制定

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信が伝えた新義州特区指定は、これまでの北朝鮮からして破格的な内容だ。具体的には、最高人民会議が採択した6章101条からなる「新義州特別行政区基本法」で、政治・経済・文化・住民の基本権利などを規定している。この基本法は今後50年間改正されない。

 まず、政治的には行政など3権を認め、北朝鮮の中央機関が外交を除き特区の事業に一切関与できないよう明記している。立法会議を別途に設置し、特区の住民権を持つ外国人も議員になれる。

 経済的には、国際的な金融、貿易、商業、工業、先端科学、娯楽、観光地として造成し、特区に2052年末まで土地の開発・利用権を付与し、投資の奨励と企業活動の環境を整える。また、特区内では住民権を持たない外国人であっても住民と同様の権利を付与し、自由な活動を保証している。この他に区章と区旗をつくって使用できると規定。このような基本法は、社会主義を標榜する北朝鮮にとってはじめてのことだ。香港、上海、深?など制度を研究した上で制定した。

 新義州経済特区の範囲は、新義州市と周辺の平安北道塩州郡、鉄山郡の一部が飛び地のように編入されている。特区周囲は、3㍍の高さで鉄柵などの壁が築かれ始めた。新義州外部からすでに、新義州の南側地域では新市街地建設準備が始まったといわれている。

 「国家の中の国家」ともいうべき特権を与えられた新義州特区は資本主義の実験場となりそうだ。


 ◆金総書記が昨年初指示

 今回の新義州経済特区は、かなり早くから構想されていたふしがある。直接的には金正日総書記が、昨年1月に上海を視察した際、「上海特区をモデルに新経済特区をつくる」よう指示したといわれ、帰国の途に新義州に立ち寄り工場視察などをした。だが、すでに99年10月に故鄭周泳・現代グループ名誉会長との会談で「新義州工団開発」を提案していた。この時は現代側が京義線(ソウル|新義州)連結のメドもたっていず難色を示したため立ち消えとなった。

 新義州は中国の丹東と連結される北朝鮮の関門であり、京義線が連結されれば韓国と中国を結ぶ物流基地の役割も果たせる。このため、90年代から経済特区構想説が再三流れていた。
この地域は鴨緑江とダムがあり、電力と工業用水が豊富なことも魅力だ。さらに、丹東には華僑と朝鮮族が多く住んでおり、投資を呼び込む上でも立地条件に適していると判断されたようだ。この準備のため、最近3年間で750人が海外研修している。特に昨年は20カ国以上に500余人が1、3カ月の研修を実施、経済・貿易部門などで資本主義実務を学んだ。


 ◆羅津・先鋒との違い

 91年末に鳴り物入りで発表された羅津・先鋒自由経済貿易地帯の設置が発表された。だが、この10年間に国連をも巻き込んで外資誘致に取り組んだが失敗に終わった。二の舞にならないのかという疑念があるが、今回の新義州液剤特区構想は、羅津・先鋒とは大きな違いがあり、また時代の流れも大きく変化している。

 双方には大きな共通点がある。まず海に面しているという点であり、これは物流に利点がある。共に国境地帯という地理的側面も類似している。だが、羅津・先鋒の場合は中央政府が直接統制した反面、今回は完全に裁量権を与えている。しかも外国人投資がしやすいように賃加工など軽工業中心の産業立地を目指している点が大きな違いだ。さらに、外資誘致で羅津・先鋒では米貨1000万㌦以上は中央政府の認可が必要だったが、今回は全く制限がない。

 一方で、7月から物価・賃金引上げを内容とする「経済管理改善措置」を実施、市場経済へ1歩歩み始めたという大きな変化がある。


 ◆京義線連結後に期待

 新義州経済特区指定は、韓国で強い関心が寄せられており、マスコミも連日大きく報道している。また、好意的に受け止めている。東亜日報23日付社説は「自らの経済的将来を設計する動きであるという点で注目される。特に外交を除き一切の国家の介入を排除しており、北朝鮮指導部の開放と改革の意思を読み取れる」と高く評価した。

 また、経済界はただちに対北ラッシュにはならないだろうが、特区でのインフラ構築が急げれ、開城で現代や土地開発公社が行っているように韓国企業の役割が大きくなるとみている。特区の成功はやはり韓国企業の進出いかんにかかっているとの見方も多い。
京義線の連結工事が始まっており、ソウル|開城|新義州を結ぶ列車が運行されれば大きな効果が期待できそうだ。


 ◆予想外?行政長官に外国人

 予想外の人事だった。新義州経済特区の責任者にオランダ国籍をもつ中国人、楊ビン氏が任命された。初代特別行政区長官に任命された楊氏は、香港などで不動産事業を展開する欧亜グループの会長。2年前の米フォーブス誌で世界2位の富豪(資産9億㌦)に選定されたことがある。

 当初、長官には北朝鮮の経済通の党幹部らが候補に挙がっていた。楊氏の抜擢は金正日総書記との特別な関係があったといわれる。

 楊氏は23日の平壌での記者会見で、15人の立法会議には中国人、台湾人、香港人、欧州人、さらには米国人も参加させるとの考えを明らかにした。また、特区では北朝鮮住民を除きすべての入国者にビザを免除すると明らかにした。
また、外国紙との会見では、世界的な現代都市にするには10年はかかるが、当面インフラに15億㌦投入する。必要なら北朝鮮国籍を取得する」と述べた。

 現在、新義州の住民と軍人・軍属20万人を他地域に移住させ、新たに技術者ら50万人を移住させる計画が進められているという。