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2002/07/19

<総合>韓日W杯感動総括特別インタビュー 高円宮憲仁親王殿下

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    韓国チームは守備も見事だったと語る高円宮殿下(右)。聞き手は本紙・朴恵美社長(16日、港区の高円宮邸)

 韓日共催のW杯(ワールドカップ)が大成功に終わった。皇族としては戦後初めて韓国政府の公式招待で訪韓された高円宮殿下・妃殿下は、ソウルでの開幕戦の観戦をはじめ釜山、慶州、水原などの地方都市も精力的に見て回られた。今回のW杯共催の成果、今後の韓日関係への期待などについて語っていただいた。(第一回 聞き手:本紙・朴恵美社長)


  ◆感動的な韓国・トルコ戦

 朴社長 W杯会場に何度も足を運ばれ、多くの試合をご覧になられたとのことですが、もっとも印象に残った試合はどれでしたか。

 高円宮殿下 もちろん日本の4試合です。中でもロシア戦がいちばん印象に残っています。日本チームがもっとも良い形で戦いましたからね。特に守備が非常に良くて、勝てないにしても、負けることがないというサッカーに近かったと思います。私は負けないサッカーと呼んでいます。いちばん安心して見られた試合でした。後はオープニングのフランス対セネガル戦。セネガルの個人能力の高さに驚きました。

 いちばん記憶に残っている試合は、スタジアムで見てはいませんが3位決定戦です。韓国とトルコ両チームとも本当によく戦いました。両チームの戦いぶりが素晴らしかっただけでなく、試合が終わってから両国の選手が肩を組んで場内を一周する光景が実に感動的でした。おそらく今回のW杯の中で最も感動的なシーンではなかったでしょうか。


  ◆韓国は守備も非常に見事

 朴社長 日本および韓国チームの活躍を、どのようにご覧になりましたか。

 高円宮殿下 いまだかつてホスト国が決勝トーナメントに進まなかったことはありません。日本も韓国も決勝トーナメントに行くんだということがまず一つの目標だったわけですよね。それが、ともに各組1位で決勝トーナメントに進出した時点で今回のW杯は大成功だったと思います。日本にはベスト8まで行ってほしかったのですが、トルコに負けてベスト16に終わりました。韓国はベスト4に進出しましたけれども、どちらが上ということではなく、両国とも本当によくがんばったと思います。

 W杯には世界中のよりすぐりのチームが集まっていますから、実力的にはそんなに差はないわけです。そのときのチーム全体の調子やコンディションといったものが非常に大きな意味を成してくると思います。開幕戦のフランス対セネガルでは、セネガルの調子がよかったから勝ったのです。フランスも惜しい場面がいくつもありましたが、運も実力のうちですからね。韓国も日本も運に救われた場面がいくつかありましたし、運がなかった場面もありました。

 韓国チームについて言えば、スピード、スタミナがあるというのが昔からの特徴の一つだと思います。今回、延長戦に入る試合がつづきましたよね。それでもみな最後まで走るべきところは走っていた。攻撃的サッカーですが、守備も非常に見事だったと思います。それとやはり技術力がアップしていると思いました。ボールに対する執念といいますか、気力でも相手を上回っていたと思いますし、国全体の応援も大きかったと思います。


 朴社長 日韓以外で印象に残ったチーム、選手はありますか。

 高円宮殿下 今回一番新鮮な驚きと嬉しさを感じたのがトルコです。早くて正確なパス回し、トラッピングとパス回しの正確さが日本より一枚上手でした。ああいう見事なサッカーをしていればあそこ(3位)まで行けるのだと思いました。

 印象深かった選手はブラジルのロベルトカルロス。彼のシュートもドリブルも非常に美しかったです。韓国の選手ですばらしい実績を残したのは洪明甫だと思います。ああいう固い守りをしてくれる選手がいると、MFもFWも安心して攻撃が出来ます。安貞桓は、なかなか甘いマスクをされた方ですね。車ドゥリは、有名な選手だったお父さん(車範根)が解説されていたそうですが、たまらない気分で息子を見ていたでしょうね。


  ◆世界のサッカー占う結果

 朴社長 大会に点数を付けるとしたら何点ですか。

 高円宮殿下 無事終了したということで80点。両国が決勝トーナメントに出場したということで100点。韓国が4位までいったということで120点です。

 ドイツとブラジルが決勝に残っても誰も不思議に思わない。ヨーロッパ対南米というサッカーの歴史の構図がそのまま具体化した決勝戦だったと思います。ところが3位決定戦は決勝トーナメント初出場同士ということで、トルコはカテゴリー的にはヨーロッパから出ていますが、東西の接点ということで東洋の国ということもできます。ヨーロッパの中でも一番オリエントに近い国とアジアの韓国、そしてアフリカ勢のセネガル、そういう第3、4勢力がどんどん強くなってきて、それが3位決定戦として現れた。
新興勢力が決勝トーナメントに出場して、そのうちの2チームが3位決定戦までいったというのが今後の世界のサッカーを占う意味では実に見事な結果になったのではないかと思います。

 審判の笛によってゴールが取り消されたシーンもいくつかありました。1点を争うゲームになっているからそれが問題になるのであって、2点とっていれば問題にはならないわけです。要するに最低2点はとれるようなサッカーを心がける方が先決で、あの1点がどうのこうのといつまでも言っているのは、必ずしも正しい方向ではないと思います。


たかまどのみや・のりひと親王殿下 1954年、三笠宮崇仁親王殿下(昭和天皇の弟)の第3男子として誕生。学習院大学法学部卒業。カナダのクイーンズ大学留学。81年から国際交流基金に嘱託として勤務。84年結婚し、「高円宮」の宮号を賜る。日本サッカー協会・同ホッケー協会など数多くの団体の総裁・名誉総裁を務められている。