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2002/03/08

<総合>W杯特別インタビュー 高円宮憲仁親王殿下

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    韓日W杯の意義は計り知れないほど大きいと語る高円宮殿下㊧と朴恵美・本紙社長

 韓日が共催するサッカーのワールドカップ(W杯)を84日後に控え、5月31日行われるソウルでの開会式に皇族の高円宮憲仁親王殿下が出席されることがほぼ確定した。3月21日に小泉首相が訪韓、金大中大統領との首脳会談で正式決定されるが、韓国政府の正式招待で皇族が訪韓するのは戦後初めてのことであり、関心を呼んでいる。高円宮殿下に訪韓に寄せる期待、W杯の意義などについて語っていただいた。(聞き手:本紙・朴恵美社長)


   ◆皇族の公式訪韓は戦後初

 朴社長 W杯開会式に皇族からどなたが出席されるのかがマスコミ紙上を賑わしていましたが、高円宮様が出席なさるそうですね。

 高円宮殿下 まだ正式決定ではありませんが…。ぜひ韓国を訪れてみたいと思っていましたが、またとないチャンスです。私は日本サッカー協会の名誉総裁をしており、開会式には行かないといけないだろうとは思っていましたので、とても幸運です。


 朴社長 皇族としては戦後何人目の訪韓になるのでしょうか。

 高円宮殿下 最初は1970年に亡くなられた李垠様(朝鮮朝最後の皇太子殿下)のご葬儀に秩父宮妃殿下と高松宮妃殿下がご出席され、そのあと皇太子(李垠)妃の李方子様のご葬儀(89年)に私の両親(三笠宮夫妻)が参列しました。一番最近ではうちの兄(三笠宮寛仁殿下)が、日韓盲人写真展(目の見えない人たちが撮った写真展)の開会式に出席し、非公式ではありますが、都合3回になります。


 朴社長 開会式出席以外にはどのようなことを予定していらっしゃいますか。

 高円宮殿下 サッカー関連のことはもちろんですけれど、韓国の文化にできるだけたくさん触れることができればと期待しています。日程が許せばソウルだけでなく地方都市にも行き、できるだけ多くのことを見てきたいなと思っているのですよ。家内が「野鳥の会」のメンバーで、韓国の野鳥の会の人達にバードウォッチングをアレンジしてもらう計画までしているのですが、韓国の自然も見てきたいですね。


 朴社長 それは、楽しみですね。

 高円宮殿下 ええ、ハードスケジュールは全然なんとも思いません。むしろ、われわれは海外に行く機会が少なく、同じ国をもう一度訪れるチャンスが果たして将来あるかどうかわからないので、行ったときにできるだけたくさん見てくるということを常に考えてしまいます。それで、ほとんど1日中動きっぱなしの日程にしてもらうのです。また、必ず現地のものを食べるようにしています。


   ◆韓国映画もキムチも好き

 朴社長 殿下は韓国関連行事にも参加されていらっしゃいますね。

 高円宮殿下 この数年間、いろいろな形で日韓交流が行われていますね。韓国映画の上映、舞踊団や歌手の公演、韓国関連フォーラムのようなものも開催されて、それまで日本ではたまにしかなかった韓国の文化、芸術というものを目にする機会がたいへん増えてきました。数年前に「春香伝」(林権澤監督)を観ましたが、あれは素晴らしい映画ですね。私はそれまでパンソリはあんまり知らなかったのですけれど、すごく好きになりましたね。
心の響きというのでしょうか、もちろん日本の音楽とはだいぶ違うのですけれど、東洋人に共通した物悲しさというか、メランコリックなものというのがとても近しいというか、同じものがあると思うのです。映画は「春香伝」以外でも「JSA」をDVDで観ましたが、あれもとても良い映画ですね。
いまはちょっとした韓国ブームですので、私自身も、少しずつですけれど韓国の芸術や文化に触れる機会が増えてきましたね。それから韓国料理は昔から大好きですし、今回は本場の韓国料理を味わう機会があるのでとても楽しみにしています。


 朴社長 韓国料理店にお出かけになられることもあるのでしょうか。

 高円宮殿下 ええ、赤坂とか六本木とか東京でも3、4軒はありますね。私は運動部員でしたので学生時代から焼き肉をよくたべにいきましたが、キムチはもちろん、生でぶつ切りにした手長ダコ(ナッチ)も大好きなんです。


   ◆一緒になって一つの目標へ

 朴社長 ところで、未来志向で新しい韓日関係を作っていかなければならないという意見が、韓日双方で強まっています。そういう点で、殿下が訪韓されることの持つ意味をどのようにお考えでしょうか。

 高円宮殿下 実際に私が韓国に行って何をするのかといっても、非常に微々たるものであると思いますが、W杯が韓国と日本に与える影響というものは非常に大きいと思いますね。いまだかつて日本と韓国が共同でこれだけの大きなイベントを行うことは、もちろん過去にはなかったことです。

 大きなイベントとして、例えば日本でも韓国でもオリンピックを開催し、ソウル・オリンピックには日本が出場して、日本のオリンピックには韓国も出場しましたけれど、それはあくまで一緒ということではなかったわけですよね。だけれどもこのW杯に関しては本当の意味で一緒に、1つの目標に向かって両国が歩み寄って、世界的に影響力のあるイベントを実施するのですから、このインパクトはどのくらい大きいのか私も実は計りかねているのです。


 朴社長 W杯共催の意義はそれほど大きいものがあるわけですね。

 高円宮殿下 もちろんW杯自体の経済的な効果はいろいろあると思いますが、それ以上に日本と韓国の間の新しい関係、新しい交流の大きなきっかけになると思います。国と国とのお付き合いは、もちろん政府と政府がしっかりとお付き合いをするということも大変大事なことですけれども、どれだけ民間レベルの交流が存在するのかということが本当に重要なことだと思うのですね。  
 いままでも民間レベルでいろいろな分野の交流がありましたけれども、やはりそれなりの制約があったと思うのです。W杯を契機にその制約を取り除いて飛躍的な交流がスタートしつつあり、この動きを両国国民は大事にしていかなければいけないと思いますね。W杯でそれが爆発して、その火が燃えさかってくれるとありがたいと思っているのですよ。それには両国がともに努力しなければいけないわけですけれども。

 私の場合、国際交流基金に20年間務めていますけれど、いろいろな文化交流を見ていて、やはり本当の意味で大事なのは民間交流だと思うのですね。民間交流がさまざまなレベルでさまざまな分野で活発化していくことで、本当の意味で両国が友人になれることだと思うのです。いくら政府と政府がお互いに約束をしていても、民間交流がそれに相応しい発展をしていなければ、やはり本当の意味では国と国とが友人関係になるというのは非常に難しいと思うのです。
ですから民間交流についた火がどんどん燃えさかっていってくれれば、21世紀の日本と韓国はとてもよい関係を築けるはずですし、また築かなければいけないと思います。過去を忘れることは絶対いけないのですが、現在と未来のため、ここで火がついた運動をどんどん深めてほしいと考えます。(上・つづく)