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2002/01/18

<総合>不正根絶と経済再建に全力

 残り任期1年を切った金大中大統領。IMF危機克服の先頭に立ち、経済改革に取り組み、南北頂上会談を実現しノーベル平和賞受賞の栄誉に輝いた大統領だった。しかし、昨年後半からは後をたたないロビー疑惑で威信を失墜、政権末期のレームダック化現象が見られる。そうした中で恒例の年頭会見が14日行われ、全国にテレビ放映された。金大統領はその会見の中で、不正腐敗の根絶と経済再建を両輪に国政に専念すると明らかした。国内世論も、「約束どおり腐敗根絶とともに政治と選挙に介入せず国政に専念する道しかない」と厳しく指摘している。

 会見に臨んだ金大統領は、昨年の自信に満ちた年頭会見とは打って変わり、やや意気消沈した表情だった。会見内容も「羅列的だ。精彩に欠いている」との評が多く、「無気力な大統領念頭会見」と題した社説もあった。足元の青台(大統領府)にまで及んだ一連のロビー疑惑の政治的責任が大きいからだ。金大統領はこの会見で、「不退転の決意」という表現を使って不正腐敗を根絶すると強調した。また、「私が先頭に立って不正根絶の一大転機にする」とも力説した。不正腐敗の根絶にかける決意を示したものであり、その成否が残った任期の評価を決定づけそうだ。

 金大統領はベンチャー企業の育成に心血を注いできた。だが、ベンチャ-企業育成政策が一部経営者ら不正行為などで、逆に腐敗の温床のようになってしまった。社会的にも大問題になり、金大統領も「ベンチャー企業の不正に一部公職者と金融人、さらには青瓦台の数人に前・現職職員まで連累して嫌疑を受けており、大きな衝撃とともに国民のみなさんに申し訳ない」と率直に謝罪せざるを得なかった。会見では「申し訳ない」を実に3回も繰り返したほどだ。

 不正腐敗根絶のための対策として、「特別捜査検察庁」の早期設置を約束した。これは昨年10月に検察が発表した改革案に盛り込まれており、国民的疑惑が生じた事件を独立的に捜査するための特別機構で、検察総長の指揮を受けないとしている。国会本会議の決議などを受けて捜査を開始することになる。また、一連のベンチャー企業不正の対策として、玉石混交である現実を厳しくチェック、選り分けて支援する方針を明らかにした。これは、ベンチャー企業に対して事前・事後の監督を強化することを示したものだ。

 不正腐敗根絶と並ぶ残り任期最大の国政課題である経済再建については、かなり楽観的な見通しを示した。

 「米国経済が3月までに底を打ち、4月からは上昇局面に向かうというのが大勢だ。EU(欧州連合)も好転するだろう。今年前半までに世界経済は底を打ち、下半期から急激に成長するのではないかとみている。世界経済がこれ以上悪くならなければ、今年は4%程度成長すると予想され、さらに好転すれば潜在成長率水準の5%も可能だ。物価は3%、失業率も3%台で安定するとみている」

 金大統領はこうした前提のもと、経済の競争力を世界水準に引き上げることを最優先課題に設定した。「国運育成のため、当面もっとも重要なのは経済の競争力強化とW杯の成功的開催、南北関係の改善の3つ」であると述べ、「下半期に予想される世界経済の回復機会を最大限活用するのに全力をあげる」と強調した。

 また、IT(情報技術)、BT(バイオ技術)、ET(環境技術)、NT(極小技術)、CT(文化コンテンツ技術)などの次世代先端技術と産業発展に総力を傾けると明らかにした。これと関連した予算は今年7492億ウオン投じられる。さらに高付加価値型産業育成のため、今後3年間に500ほどの一流商品を発掘する方針も表明した。

 一方で、「最近、外国の有力企業が彼らのアジア本部を韓国に移す動きをみせている」と述べ、「わが国が東北アジアのビジネス中心国家に発展するための青写真を今年上半期中に作成する計画だ」と明らかにした。

 これに対する経済界の反応は、「世界一流水準の競争力を備えることを国政の最優先順位に置いたのは歓迎」しながらも、「各種選挙日程で政治が経済をわい曲してはならない。またさらなる規制緩和が必要だ」と注文をつけた。

 野党・ハンナラ党は、「あまりに楽観的な経済見通しであり、実現性はない」と酷評した。