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2003/10/24

<総合>巨大市場2006年誕生へ

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       韓日FTA政府間交渉の年内開始に合意した盧武鉉大統領㊨と
       小泉純一郎首相

 世界貿易の潮流になっているFTA(自由貿易協定)が韓日間でも締結される見通しとなった。盧武鉉大統領と小泉純一郎首相は20日の韓日首脳会談で、2005年妥結を目標に政府間交渉の開始を宣言した。韓日FTAが実現すれば、世界経済の17%を占める巨大市場が誕生することになり、東アジアの経済統合へ拍車をかけることになる。

 APEC(アジア太平洋経済会議)首脳会談のためバンコク入りした両国首脳は、シェラトンホテルでの首脳会談後に発表した共同発表文で、「韓日FTAの締結が両国間の貿易と投資を拡大し、相互協力を増進させることによって、両国関係をより一層高い次元へと発展させ、相互利益を実現する」という点で一致したと明らかにした。

 この韓日FTAは、両国の国交正常化40周年に当たる2005年に締結、2006年発効を目標にしており、すべての分野で市場開放と自由化を通じて両国を巨大な単一市場にしようというものだ。今後、①投資分野の例外のない自由化②早期関税撤廃③東アジア経済統合の3つを基本原則に政府間交渉が進められることになる。開始時期は12月中旬ごろになるとみられている。

 ◆ 背景 ◆

 当初、韓日FTAに対して韓国側は慎重だった。対日赤字の拡大を恐れたからだ。すでに1965年の国交正常化以来、赤字額は累計2000億㌦に迫っており、実際に完成品のみならず部品・素材など韓国産業界への広範な被害が予想されている。だが、所得2万㌦をめざす韓国にとって韓日FTAの早期締結が必要だと政策転換した。

 その背景には世界の潮流がFTAを軸にブロック化していることがある。韓国としても東アジアを束ねる経済圏をつくることが必須で、そのために韓日FTAは避けられないと判断した。WTO(世界貿易機関)によると、FTA発効件数は184に達している。これに比べ韓国は唯一チリと協定を結んだが、批准が遅れまだ発効していない状況だ。対日赤字問題については、中長期的に克服できる問題だという産・学・官の共同研究会の最終報告書も政策転換を促すのに大きな役割を果たした。

 同報告書は、「FTA締結後1、2年の短期では対日赤字は60億㌦増大するが、3年以降の中長期でみると日本から輸入する部品価格などが下がり韓国の輸出競争力が強化され、全体貿易は30億から400億㌦以上の黒字要因が発生する」として、韓日両国にとって中長期的にGDP(国内総生産)を押し上げる効果が大きいと指摘した。

 ◆ 課題 ◆

 韓国側はFTA発効初期に鉄鋼や繊維など一部を除き多くの製造業で被害を予想している。特に、素材・部品を生産する中小企業にとっては死活の問題であり、競争力をある程度確保するまで時間の余裕が必要だ。従って、どの品目に対していつから関税を撤廃するかが、今後の政府間交渉の焦点になっている。

 特に、中小企業界は、「政府は交渉過程で日本から技術移転など産業協力の保証を得るようにしなければならない」と主張しており、政府間交渉の前途は必ずしも楽観できない。また、学界の一部には、「韓国の硬直した労働市場と労使関係が変わらない状態でFTAを締結しても日本の投資及び産業移転は容易でない。

 むしろ、韓国の対日輸出の最大の障害になっている日本の非関税障壁の撤廃に全力をあげるべきだ」と声が強い。このようにみると、今後の政府間交渉は決して楽観できるものではないが、より次元の高い産業競争力をつける新たな契機になることは間違いなさそうだ。

 一方で、農水産業分野では工業製品に比べ韓国に得が多い。財政経済部によると、FTA発効で農水産物の対日輸出は9億㌦以上増大する見通しだ。野菜など農産物で6200万㌦、加工食品で8億5400万㌦、水産物で3000万㌦の内訳だ。

 日本の農水産物輸入に占める韓国の農水産物の比率は2・5%(8位)に過ぎず、FTAを通じて価格競争力が確保されシェアが拡大されると分析されている。

 ◆ 意義 ◆

 韓日FTAの直接的な効果は、人口1億7000万人、GDP基準で世界経済の17%占める単一市場が形成され、韓日両国の企業が自由にこの市場を活用できることだ。当然、競争は激化するが、世界市場における両国企業の国際競争力は一層強化されると期待される。また、両国企業の提携なども活発に展開されそうだ。

 一方で、韓日FTAは今後の韓日中FTAの軸になると期待されている。東アジアではASEAN(東南アジア諸国連合)と中国がFTA締結をめざして動き出しており、重層的にFTAの動きが活発化している。

 米国は最近、全米自由貿易地帯(FTAA)構想に力を入れており、EU(欧州連合)は来年に加盟国を15カ国から25カ国に拡大する。このように世界的に巨大な経済圏が展望されているだけに、東アジアとしても手をこまねいているわけにはいかない、という事情がある。

 金昌圭・産業資源部国際協力企画団長は、「韓日FTAは米国、EUに劣らない東アジア自由貿易地帯(EFTA)を実現する基盤になる。韓国が東アジア経済で孤児にならないためには韓日FTA、韓日中FTA、東アジアFTAを積極的に活用しなければならない」と力説した。

 ◆ 反応 ◆

 全国経済人連合会、大韓商工会議所など経済5団体は、韓日FTAの政府間交渉開始宣言について、「これを契機に韓国のFTA推進政策が加速されることを期待する」と歓迎し、被害が予想される分野に対して支援できる方策を考究しようと提案した。また、国会批准が遅れているチリとのFTAを早期に発効すべきだと促した。