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2003/06/27

<総合>所得倍増 5年後2万ドル達成

 盧武鉉大統領の任期中に国民所得を1万㌦から2万㌦に倍増させる計画が本格的に動き出した。2008年までに国民所得を倍増させるためには、年平均5-6%の成長であり、経済政策の柱をパイの拡大におき、分配重視の路線を軌道修正した。近く2万㌦達成の青写真を発表する。また、国家情報院の機能をこの目標達成のための国家戦略機構に全面改編することも決めた。今年の経済成長率は3%台に低下する見通しが相次いでおり、激化する労使紛争による不安も高まっている中、所得倍増という大きな目標に国民の意思を結集させたという狙いもある。

 政府は、所得2万㌦達成を国政の核心目標として公式採択、近く下半期(7-12月)経済運用計画で具体的な政策方向を示す計画だ。すでにKDIに体系的な研究を依頼している。

 特に力点をおいているのは、①労働市場の柔軟化②起業しやすい風土③新成長産業の育成④東北アプロジェクトなど。

 盧武鉉大統領は最近、政府中央部署局長クラス560人を対象に講演し、「参与政府が民主主義と市場経済を重視する政策を発表したのは、国民所得2万㌦時代への飛躍をにらんだものである」と指摘、「市場競争を通じて技術革新を達成し、世界市場で韓国が競争力を持つようになればこの目標は達成できる」と強調した。そのための制度改革に取り組む決意を改めて力説した。

 盧大統領は「分配と成長」を同時追求することは可能だと表明してきたが、明らかに成長重視に軸足をおきはじめた。青瓦台(大統領府)も最近の「青瓦台は労組びいき」の批判に対し、企業寄りの政策に転換し、政府の革新を通じて国家競争力を強化する方針を明らかにしている。また、失業者を支援する「分配戦略」から積極的な雇用の創出を誘導することで問題解決を図る方針だ。

 一方、国家情報院の機能を全面改編し、今後は経済発展のネックになっている旧時代の各種制度の改善を図り、韓国を東北アジアの先進経済国に引き上げるための政策に力を集中するという画期的な決定が下された。従来の情報機関から経済を軸とする国家戦略機関への変身だ。

 組織改編は、対共政策室を情報分析室と情報協力チームに分割し、対共対策室の経済チームと海外担当部署の海外経済情報組織を統合して国益戦略室に新設する。同室は対外経済と国内経済、東北アジア中心国家プロジェクトを担当する。

 国家情報院の関係者は、「国益戦略室は国際情勢の変化に迅速に対応し、韓国の国益を創出するための新しい国家戦略を樹立する窓口の役割を果たすだろう」として、「まず最初に経済発展の足かせになっている制度的問題を点検して関係部署と改善を図る計画だ」と述べた。

 国民所得2万㌦達成のためには多くの課題が横たわっている。1人当たりのGDP(国内総生産)を昨年の1万㌦弱から今後5年間に2万㌦に引き上げるためにはまず5%以上の成長が前提だ。だが、韓国経済は今年、3%台にとどまる見通しだ。労使紛争が相次ぎ、労組寄りの解決が続いていることから先行きも不安だ。これに経済界の危機感は最高度に達しており、全経連など経済5団体も連日、政府に改善を求めている。

 研究機関も事態を重視しており、韓国経済研究院は最近発表した報告書で、韓国経済はIMF危機以降で最悪の状況に直面しており、企業および産業競争力が崩壊段階に進入している兆候が現れていると警告した。同報告書によると、産業生産増加率が今年4月、IMF以降最低の1%に落ち込んでおり、設備投資も4・2%のマイナスに転落した。潜在成長力が弱まっているとの分析だ。このような状況が続けば失業者が増え所得増加も鈍化、経済全体に悪影響を及ぼすのは避けられない。

 国内での産業生産の鈍化は、生産拠点の海外移転増加とも無関連でない。特に、対中投資は今年1-4月で3億9000万㌦に達し、前年同期に比べ2倍近い伸びを示した。対米投資も急増している。逆に対韓投資は減っている。労使紛争が解決しなれば、このような傾向に拍車がかかるのは必死だ。

 所得倍増計画をスローガンに掲げた政府は、この現実を直視、総合的な解決策を急ぐ必要がありそうだ。