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2003/01/10

<総合>盧武鉉新政権 財閥政策で硬軟両様

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    新政権の政策づくりに本格的に取り組んでいる大統領職引き継ぎ委員会。昨年末、政府中央庁舎別館前で掲板する盧武鉉次期大統領(左)と林采正委員長

 年初から本格的に活動を開始した大統領職引き継ぎ委員会。いまその動静が最も注目されている集団だ。林正采・委員長をはじめ25人の委員のもと、170人の民主党、政府、学者ら実務スタッフが支えるこの委員会は財政経済部をはじめ政府各部署からの業務報告を受け新政権の政策づくりに忙しい。その中で、経済問題では財閥政策がどうなるかが強い関心の的になっており、特に、相続・贈与税の強化や金融機関の系列分離、財閥グループの構造調整本部解体などをめぐっては財界、マスコミを巻き込んで激しい論議を呼んでいる。

 盧武鉉・次期大統領は選挙公約で、貧富の格差を解消し公正な社会を実現すると訴えた。そのため富の世襲遮断が重要課題として浮上している。いまその行方が最も注目されているのが相続・贈与税の完全包括主義導入。盧氏は大統領当選後も、富の世襲根絶のため同制度の導入を強調しており、制度改変が避けられない見通しだ。

 完全包括主義とは、税法で非課税と明示されない限りすべての所得に対し課税する方式で、法に明示された対象にだけ課税する列挙主義と反対の概念だ。韓国の場合、現行制度は折衷的だが、今後は課税対象を条目ごとに明示せず、すべての相続・贈与行為に対して課税し、財閥などに抜け穴を与えないとの趣旨だ。これに対しては違憲論も提起されているが、「現行の所得税制度も事実上、完全包括であり、問題はない」としている。

 証券関連の集団訴訟制度導入も大きな論議を呼んでおり、財界は強く反発している。このため盧次期大統領は、最近の経済5団体長との懇談会で、「集団訴訟制ですべての企業が被害を蒙るという誤解が広がっているが、制限的な施行なので副作用はないと考える」と説得したほどだ。

 これまで現政府は、総資産2兆ウオン以上の上場・登録法人を対象に株価操作、粉飾会計、虚偽公示など一部証券取引法違反行為に対してだけ同制度を導入との立場だった。これを拡大適用するというのが新政権の考えだが、できるだけ衝撃を減らす方向で検討されそうだ。

 金融機関の系列分離請求制の導入も、選挙公約の一つだが、実際の導入は不透明になっている。これは金融機関が財閥系列会社に不当支援を繰り返す場合、公正取引当局が裁判所に系列分離を請求できるようにするものだが、個人の財産権を侵害する素地があるとの反発が強く、引き継ぎ委では慎重に検討をしている。系列分離を命令する場合、実際には大株主の株式を処分しなければならないからだ。

 不当内部取引禁止などの実効性を高めるため、公正取引委員会に時限付きで司法警察権を付与すべきだという盧次期大統領の公約も大きな論議を呼んでいる。引継ぎ委では、「司法警察権付与は過剰規制だ」との批判を受け、「導入するにしてもあくまで制限的になる可能性がある」とみている。

 マスコミで大きく報道された財閥の構造調整本部解体は、引継ぎ委の特定委員の考えが委員会の決定のように伝えられたと否定している。多くの委員が「これまで皇帝経営の産室だった企画調整室や秘書室が強制解体されて新たに生まれたのが構造調整本部であり、それを人為的に解体すればまた違う形態の組織がつくられるだけだ」という反応がある。

 次に、財閥の相互出資と支払い保証規制強化問題。現行では資産規模2兆ウオン以上の大企業集団を対象にしている。担当員は、これをすべての企業に拡大すべきと主張しているが、「副作用が大きい」と引継ぎ委全体の雰囲気は否定的であり、現政権の政策を維持する方向で落ち着きそうだ。