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2004/06/11

<総合>楽観か・適切か・盧大統領の経済認識

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                 盧武鉉大統領

 盧武鉉大統領は、7日の第17代国会開院祝賀演説で、最近の経済危機論に言及、「誇張された危機論こそ市場を萎縮させ歪曲させるばかりか、本当の危機を招き寄せる」と警告した。そして、「いまこの時期に最も重要な危機管理は、誇張された危機論を眠らせることだ」と力説した。この日の演説の80%を経済問題にさき、自らの経済認識を鮮明にしたが、「危機論の是非が問題ではない。現実的な対応が必要だ」と反論の声もあがっている。果たして盧大統領の経済認識は適切なのか、それとも楽観的すぎるのか―。

 最近の経済危機論は極度に冷え切った内需萎縮や400万人に肉薄する信用不良者問題が背景にある。加えて、原油急騰や中国経済の金融引き締め、米国の金利引き上げの動きが韓国経済に一層の悪影響を及ぼすという懸念が高まっている。

 盧大統領の経済認識は厳しさはあるが必ずしも深刻な危機ではないというものだ。この日の演説で自説の根拠をかなり詳細に説明した。まず、「危機論が出た1989年当時、政府は雨霰のような世論に押され、証券市場浮揚策と建設投資拡大策をとった」と過去の事例を引き合いに出し、「その政策の結果、地価が暴騰し、物価が跳ね上がり、経常収支も赤字に陥り経済が深刻な危機に陥った」と診断した。

 89年当時は、ソウル五輪景気の反動もあって、成長率が6・1%に低下、経常収支黒字も47億㌦に減少する一方、民主化過程による労使紛争の頻発など経済環境は確かに悪化していた。マスコミなどでも危機論が幅を利かせていたが、盧大統領は「当時は危機ではなかった。むしろ(不動産投機を抜本的に封鎖する)土地公概念と金融実名制改革を阻止するため総体的危機論が提起された疑惑がある」と指摘、「政治的な理由や必要な改革を阻止するため不安を増幅させ危機を煽れば経済に助けにならない」と強調した。

 現在の経済状況について、極度の内需不振は「大きな問題」であると認めながらも、輸出が昨年9月以降、爆発的に増えており、このような輸出増加が時差をおいて内需につながると判断、危機でない根拠を次のように列挙した。

 ①輸出好調を背景に今年の貿易収支黒字が史上最高の200億㌦に達する見込みである。

 ②外貨保有高が世界第4位の1600億㌦に達し、通貨危機の97年末の40億㌦とは比べものにならない。

 ③上場企業の利益率が97年以来、過去最高値を記録、負債比率は先進国水準に低下している。企業が内実固めを開始していることを示すものだ。(ちなみに上場製造業の売上営業利益率は第1四半期で11・26%を記録、前年同期より2・22ポイント上昇。上場企業平均負債比率は104%に低下)

 ④IMF(国際通貨基金)、OECD(経済協力開発機構)など国際機関も韓国経済は回復に向かっており、今年の成長率を5%以上と予測している。

 ⑤財界が積極的な投資を約束しており、7年間足踏み状態の設備投資も今年は大幅に増える見込みである。(全経連は盧大統領との懇談会で34%増を約束)

 ⑥労使間の無紛糾宣言が相次いでおり、労・使・政が対話のテーブルについているのも「希望の証」である。

 さらに、最近の原油急騰やチャイナショックなどについては「十分耐えうる水準であり、警戒心をもって対応していく」と自信をのぞかせた。この問題について青瓦台(大統領府)では、チャイナショックは「中国の競争力に照らしてみるとき、急激な萎縮はない」と判断。米金利引き上げの動きについても「金利引き上げが米国経済を萎縮させるならば合理的な努力をするだろう」と楽観。さらに原油急騰に対して「現在の原油価格は単純な需給上の問題というより、中東内部事情などに起因する」とみている。

 いずれにしても、現段階で経済危機論に振り回されて経済政策をとれば89年の再版となる、というのが盧大統領の経済認識であり、いたずらな景気浮揚策をとらないことを示している。また、このような経済認識のもと、今年の経済成長率は5%、任期中には毎年6%以上が可能だと楽観した。

 財界は、盧大統領の経済認識に対して、「政府や政治圏、労働界も今の時点で最優先国政課題は経済活性化と働き口創出であることに合意し、国力を結集していくことを期待する」(全経連)と前向きな反応を示した。だが、財界内には「大統領は危機であるかないかという話よりは経済危機に対する実際の管理能力をみせてほしい」という批判的な声もある。また、「経済の両極化現象加速化する現状で危機論の認識の違いをあれこれいっても何の意味もない」といった指摘もあった。

 野党は強く反発した。ハンナラ党は、「400万信用不良者と100万大卒失業者問題については一言半句もなく、誇張された危機とだけいっている」と批判。民主労働党も「国民の90%が実際の経済の困難さのため苦痛を感じているのに、大統領は政府関係機関が発表した数値だけをみている」と指摘。またマスコミ論調には、「大統領の経済認識は絶望的。いま重要なのは危機論争でなく苦痛を減らす努力だ」といった酷評もあった。