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2004/05/14

<総合>韓国経済危機論が台頭

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    チャイナショックと米国の利上げ可能性、原油価格上昇などで金融市場が大混乱に陥り、10日の総合株価指数は、前日より48.06ポイントも下落した790.68で引けた。頭をかかえる市場関係者

 韓国で「チャイナショック」と表現されている中国の強力な景気過熱抑制策、米国の先物市場(12日)で1983年以来最高値の40・77㌦をつけた原油価格高騰、さらには米国で早期金利引き上げの動きなど韓国経済を取り巻く環境は急激に悪化している。週明けの10日の総合株価指数が790・68に急落、「ブラックマンデー」と呼ばれた。国内の深刻な投資と消費の冷え込みに加え、一連の悪材料で唯一の頼みである輸出の先行きまで懸念されており、経済界や経済専門家の間で韓国経済危機論が台頭、政府の早急な対応を求めている。

 企業経営者、銀行長、証券会社社長、経済学者ら41人を対象にした朝鮮日報の緊急世論調査によると、実に78%が「韓国経済はかなり深刻な危機」と診断し、「極めて深刻」(12・2%)を含め90%以上が韓国経済の現状を厳しく見ている。ギャラップの世論調査でも韓国国民の8割が危機論に立っている。

 現在の韓国経済は14カ月連続して低迷している深刻な消費不振、400万人に迫る信用不良者、8年連続して足踏みしている企業の設備投資など内需が冷え切っている。

 これに追い打ちをかけたのがチャイナショックだ。中国の温家寶首相は加熱景気を抑制すると発表、鉄鋼、アルミ、セメント、自動車、不動産の5大加熱業種への新規投資を注視するなど本格的な金融引き締め政策を取り始めた。現在、多くの韓国企業が中国に進出しており、資金繰りなど早速影響が出始めている。

 特に懸念されるのは輸出。対中輸出比率は2000年の10・7%から昨年には18・1%今年は20%に達すると予想されていた。ところが中国の引き締め策で今後打撃は避けられない。ある研究機関の試算によると、中国の経済成長率(昨年9・1%)が1%ポイント下がると韓国の輸出は0・5%減少するという。現在、内需不振の中、韓国経済を支えているのは年間2000億㌦突破が確実な輸出だが、最大輸出先である中国向けの先細りは避けられそうもない。

 チャイナショックに加え、第3次オイルショックに対する懸念も出ている。イラク問題のためサウジの石油施設に対するテロ攻撃の噂も流れ、原油価格は上昇を続けており、5日の米ニューヨーク取引所で西部テキサス重質油が14年ぶりの高値1バレル=39・5㌦を記録したのに続き、12日の先物市場ではついに40㌦を突破した。IEA(国際エネルギー機関)資料などの分析結果、原油価格が5㌦上がれば韓国の貿易収支は55億㌦悪化するという試算も出ている。

 物価への影響も大きい。すでに国内生産者物価は原油高の影響をうけ、4月末現在で1年前と比べ5・5%上昇している。これは通貨危機後の98年11月の11%以来最も高い上昇率だ。消費者物価にも波及しており、消費萎縮はますます深刻になっている。

 これに加え、米国の低金利政策が高金利政策に転換する動きがあり、すでに米国の国債価格が上がり始め、アジアなどに流れていた国際資金が米国に流れ出した。一連の環境悪化は、アジアの株価を下落させ、特に韓国の総合株価指数の下落幅が大きく、10日にはついに前週末比48・06安の790・68まで暴落した。12日には817・09まで戻したが、経済先行きの不安が解消されないと株価不安は継続する可能性が高い。

 金融専門家は、「この間、輸出が増え、株価が大きく上昇したのは経済の体質が改善されたからではない。世界的な低金利とドル安で米国など先進国から流出したドルがアジアになだれ込み株価を押し上げたのだ。特に韓国株式の時価総額に占める外国人の比率は2000年末の36%から43%にまで高まっている。輸出好調も主に中国特需のおかげだった」と指摘、環境変化に対する早急な対策を促した。

 政府と与党は12日、定例政策会議を開き、民生安定のため6月初まで5000億ウオン規模の補正予算編成で一致した。

 だが、本格的な対策を早急に立てる必要がありそうだ。特に現在は緊急事態であり、実効性のある機動性ある対策が求められている。経済専門家の間には、「いまは分配か成長かで右往左往しているときでない。また、経済界を締め上げることが能事ではない。難局克服のため明確な指針を打ち立てるべきだ」という声が強まっている。 

 盧武鉉大統領は、14日の大統領弾劾棄却決定をうけて対国民談話を発表、総理を含めた改閣を実施する予定だが、経済危機論を払拭する対策を樹立するリーダーシップを発揮することが望まれる。