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2005/11/25

<総合>「ITコリア」で商談も活発

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    韓国の民族衣装「ツルマギ」姿の盧武鉉大統領(前列左から6人目)らAPEC首脳(釜山のAPECハウス中庭)

 5万人の警備が敷かれた厳戒態勢の中、釜山で開かれていたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議。コメ自由化を反対する農民デモが開場周辺を押し寄せたりしたが、心配されたテロもなく、貿易自由化促進を謳った釜山宣言と、WTO(世界貿易機構)の新多角的貿易交渉(ドーハラウンド)の推進を促した特別宣言を採択して19日無事閉幕した。期間中、期間中、各国間で活発な首脳会議も展開され、主会場では「ITコリア」展示会が参加者の注目を引いた。21カ国首脳や各国CEO(最高経営責任者)たちは今回の釜山会議にどんな印象をもって帰って行っただろうか。APEC釜山首脳会議を決算すると、大きな成果が見えてきた。

 今回の釜山首脳会議最大の成果は、「より自由な貿易の進展」を再確認した釜山宣言と、来月香港で開かれるWTO閣僚会議を控え、新多角的貿易交渉を強く促した特別声明を採択した点にある。世界経済がブロック化し、WTOの機能が危ぶまれてだけに、世界GDP(国内総生産)の57%、世界貿易の46%を占めるこの地域が改めて自由貿易を強く打ち出した意味は大きい。

 釜山宣言で謳った貿易自由化を実現するための具体的な実行計画の一環として釜山ロードマップ(行程表)も採択した。これは先進国は2010年まで、開発途上国は2020年まで貿易・投資を自由化するとした目標を達成するため、国別に中間点検し、より実効性をもたせようというもの。

 釜山宣言はまた、テロ行為を糾弾し、鳥インフルエンザ、大型自然災害などに対して協力を進めるとともに、原油高騰に対処するためエネルギー投資拡大を打ち出した。さらに、腐敗行為者と関連者及びその資金の逃避先とならない措置をとることにした。

 特別声明では、2003年のメキシコ・カンクン閣僚会議での決裂以降、漂流状態の新ラウンド交渉の2006年末妥結を求めている。このため、交渉進展の大きな足かせになっている先進国の農産物輸出補助金を2010年までに全廃することを促した。非農産物分野でも関税引き下げ幅が大きくなる「スイス方式」の適用を決めた。最も多額の農業補助金を出しているEU(欧州連合)がすんなり受け入れるとは考えられないが、今後の交渉に影響を与えそうだ。

 議長の盧武鉉大統領は、「APECは過去16年間、開放された自由貿易体制下で域内経済成長に貢献してきた。今後、世界化がもたらす成長の果実を共有できる方策を模索しなければならない」と述べるとともに、「自由化による域内の経済・社会的格差解消のため支援基金として韓国は2007年から3年間200万㌦を供与する」と明らかにした。経済社会の二極化問題に対する問題提起をしたことの意味は小さくない。

 一方、各国間で首脳外交が活発に展開され、盧大統領は通商面で、中国、ロシアとの首脳会談で大きな前進を図った。両国に「市場経済地位」を与え、大幅な貿易拡大に合意した。

 首脳会議とは別個に世界各国のCEO(最高経営責任者)ら800人が参加した会議が開かれ、彼らと各国首脳との協議の場も設けられて、活発な意見交換が行われた。韓国経済界はこれらの場を通じて積極的なマーケティングを展開した。特に、APEC期間中に300台の端末で2000人以上に初めてサービスを開始した携帯インターネット「ワイブロ」が話題を呼び、KTとサムスン電子は商談におわれた。

 特に、サムスン電子は、イタリア最大の通信会社TI(テレコムイタリア)とワイブロシステム提供のための戦略的提携を結んだ。来年2月にイタリアのトリノで開かれる冬季オリンピックでワイブロサービスを実施する計画だ。

 また、韓国型地上波移動マルチメディア(DMB)に対する引き合いも殺到、情報通信部は英国貿易投資庁特別代表資格で訪韓したアンドルー皇太子と来年4月からロンドンで官営共同でDMB試験放送実施で合意した。フランスはサムスン電子から端末機の提供を受け、ドイツは来年のワールドカップ期間に12都市で試験サービスにはいる計画だ。このように、APECは、韓国IT技術が世界に席巻する機会にもなった。

 その一方で、先週末から8日間のAPEC期間中に行われた各種投資環境説明会では、対韓投資交渉が活発に行われた。産業資源部によれば、釜山誌、仁川経済自由区域庁、KOTRAなどが結んだMOU(投資了解覚書)は12社・5億600万㌦に達した。

 APEC釜山会議には海外から1000人以上のメディア関係者が殺到、釜山を世界に知らせるチャンスにもなった。各国CEOは、国内経済人が催したゴルフ会にはほとんど参加せず、むしろ産業視察に熱心で、釜山親港や光陽製鉄所に「素晴らしい」との感嘆の声が聞かれた。

 「APEC経済学」とでもいうべき試算がある。いうまでもなく今回のAPEC首脳会議は釜山市が催した国際行事の中で最大規模であり、費用は2000億ウォンかかった。だが、収益は最大1兆1000億ウォンに達する、とAPEC準備企画団は対外経済政策研究院の調査をもとにはじいた。

 経済的効果以上に、釜山、韓国のイメージアップにつながれば無形の財産になることは間違いない。笑顔で挨拶するアインシュタインそっくりの「アルバートロボット」の印象とともに釜山は各国首脳やCEOにしっかり記憶に刻みつけられたのではないだろうか。