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2008/11/28

<総合>今度は米国発のデフレ恐怖

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 米国発のデフレ恐怖が現実味を帯びてきた。米国では景気後退の中、物価が下がり続けており、深刻な不況に結びつく恐れがある。世界GDP(国内総生産)の4分の1を占める米国がデフレに陥れば、その波及効果は世界規模とならざるを得ない。韓国にとって米国は中国に次ぐ第2位の輸出市場であり、その影響は甚大だ。金融危機に次ぐデフレ危機――。IMF(国際通貨基金)は最近、米国をはじめ日本、EU(欧州連合)の先進諸国は来年マイナス成長に陥ると予測。韓国の成長予測も2%に下げた。

 米労働省によると、同国の10月の消費者物価は前月より1%下がった。統計を取り始めた1947年以降最も大きい下げ幅だ。メリルリンチのエコノミストは、「今年の米国の物価上昇率は0%になる可能性が高い」と予測する。

 デフレ状態では商品だけでなく株式や不動産などの資産価値も下がる。株価指数を算出する優良500株のうち、シティグループやスターバックスなど101社の株価は10㌦を下回り、「10㌦未満の株がこれほど多いのは第2次世界大戦以降で初めて」の事態となった。住宅景気も悪化の一途で、10月の新規住宅建設実績は79万1000戸で、前月より4・5%減少した。

 消費も冷え込み、米GDPの70%を占めている民間消費は第3四半期(7~9月)に前期比3・1%減少となった。生産委縮が雇用減少へとつながり、景気低迷が長期化することが懸念される。事実、新規失業手当申請者数が急増している。

 米中央銀行のFRBもインフレよりデフレを懸念し始めた。ドナルド・コーン副議長は、「4~5カ月前よりもデフレの危険が大きくなったことを心配している。攻撃的な通貨政策を取るべきだろう」と述べた。世界的な輸出減少と消費委縮、雇用減少などで日本と 欧州でもデフレの懸念が出ている。

 韓国も無縁ではない。むしろ影響は直接的だ。貿易依存が高く、対外開放型の経済の宿命でもある。すでに徴候は随所に出ている。

 韓国銀行の李成太総裁は先月の金利引き下げの際、「最近の国際経済状況は平素の景気下降時と比べ、異例的に良くない」と述べていた。この夏までは原油価格高騰の影響で物価上昇、賃上げ、製品価格転嫁とインフレ懸念が強かった。だが、わずか2カ月で状況は一変、8月に前年同月比5・6%だった物価上昇率は 10月には4・8%に低下、11月はさらに低下する見込みだ。

 これとは逆に、内需不振による景気下降がはっきりし始めた。韓銀によると、11月消費支出展望消費者同向指数(CSI)は前月の100から94に下がった。100以下になると、消費支出を減らすと考える消費者の方が多くなることを意味する。事実、ガソリンや灯油は値下がったが、消費は増えていない。統計庁によると、米国発金融危機の余波などで9月の鉱業・製造業実質生産は昨年同期より0・8%減った。

 海外の需要減少により輸出も影響を受けており、半導体など主要輸出品が減少している。来年は輸出全体がマイナスに陥る恐れも出ている。サムスン経済研究所の鄭求鉉所長は、「すでに資産デフレが進行中だが、現在の物価水準から見ると、まだ全般的なデフレ状況ではない」と分析したが、資産デフレは危険な徴候。雇用不振、消費委縮、住宅建設不振に加え世界経済の沈滞で輸出さえ不振になれば、韓国の成長率は低下するしかない。

 実際、IMFは24日、韓国の来年経済成長率展望を先月の3・5%見通しから2%に下げた。またOECD(経済協力開発機構)も25日、韓国の来年経済成長率展望を2・7%に下げた。今年6月の予測値5%を大きく下回る。

 IMFは先進国経済の沈滞で、アジアの主な成長動力だった輸出が減少し、金融が委縮すると診断した。韓国の成長率予測を最も大きく下げたのは、「輸出入がGDPの70%を超え、アジアで金融が最も多く開放されているため外部の衝撃も大きくなるほかない」ためという。

 「100年に一度」と言われる前例のない危機対応に世界も破格的な措置を相次いでとっている。韓国はIMFショック以来のウォンなど金融不安に加え不況にも直面している。

 全光宇・金融委員会委員長は25日の講演で、「景気後退に備えた果敢な政策が必要だ」と強調したが、李明博大統領はAPEC首脳会議で「前例のない危機に前例のない対策」を訴えている。迫り来る危機克服へ向けて総力をあげる必要がありそうだ。


  ◆デフレ=デフレーションの略。物価が下がり続ける現象で、インフレーションの反対の概念。デフレが怖いのは、投資と消費の冷え込みで経済の活力が落ち込み、不況、恐慌につながるからだ。不動産や株式など資産価値が下がり続けることを資産デフレという。