ここから本文です

2008/10/24

<総合>銀行に1000億㌦債務保証

  • sogo_081024.jpg

    金融対策を発表する左から李成太・韓銀総裁、姜万洙・企画財政部長官、金光宇・金融委員長

政府は、米国発の金融危機に対処するため、銀行に対する1000億㌦の債務保証と市場への300億㌦の資金供給拡大を柱とする総額1300億㌦の「国際金融市場不安克服対策」を発表した。既に外貨スワップ市場に供給した100億㌦、輸出入銀行を通じて支援した50億㌦を含めれば、政府による支援額は1450億㌦に達する計算だ。だが今回の措置に対し市場は冷淡だった。20日こそ総合株価指数が上昇し、外為市場もウォン高に振れたが、翌日からは再び株価下落、ウォン安が続いている。

 今回の対策は、政府・与党間の会議を経て確定され、姜万洙・企画財政部長官、全光宇・金融委員会委員長、李成太・韓国銀行総裁が日曜日の19日、ソウルの銀行会館で会見を開き発表した。IMF(国際通貨基金)・世界銀行合同年次総会等に参加し米国から戻った姜長官は、「各国高官らと合って話してみると、危機が予想より深刻だと実感した」と述べており、韓国の金融機関に問題は生じていないが早期に予防措置をとる必要があると判断したようだ。

 対策の柱は、銀行が来年6月末まで海外から新規に借り入れるか返済期限が到来する対外債務を期間3年、総額1000億㌦の範囲内で保証するというもの。当面は産業銀行と輸出入銀行が保証を行うが、国会による同意手続きを踏んだ後は政府が直接保証を行う2段階で実施する。また、外貨準備から300億㌦を切り崩し、外国為替市場を通じ、銀行や企業にドル資金を追加供給する。

 姜長官は「主要先進国が銀行間借り入れに対する債務保証に乗り出しており、韓国の銀行が海外で資金調達を行う際に不利益を受けないようにしなければならない。国内金融市場の不安を早期に沈静化するための先制措置だ」と説明した。

 来年6月末までに返済期限が到来する銀行の借入金は800億㌦で、1000億㌦の債務保証枠があれば十分だ。今回の措置で銀行と企業は深刻なドル資金不足が緩和されるとみている。

 また、今対策では関連法の改正を行い、積立式株式投資ファンドに対して、投資額の一定比率を3年にわたり所得控除するとともに、株式投資ファンド、債券投資ファンドを問わず、配当所得を3年間非課税にすることも盛り込んでいる。この他に中小企業支援のため、中小企業銀行に1兆ウォン相当の政府保有株式を現物出資する。

 これとは別に、低所得層支援、雇用創出などで景気浮揚につなげるため、来年度予算を増額、再調整する方式で財政支出を拡充する方針だ。

 欧米が金融危機に対応してこれまで取った対策は、①銀行の海外からの借り入れに対する債務保証②預金全額保護③銀行の国有化(公的資金投入)④流動性供給の拡大⑤利下げなどだ。

 政府による銀行に対する対外債務保証と流動性供給拡大は、今回の対策に盛り込まれた。利下げも0・25%引き下げられ、李韓銀総裁は追加引き下げも示唆している。しかし、預金全額保護、銀行の自己資本強化などの措置に関しては、現時点で適切ではないと判断している。これは、欧米と異なり、預金取り付け騒ぎが起こる徴候がなく、同様の措置を取れば逆に不安心理を高める恐れがあるとの判断による。現在の預金保護上限は5000万ウォンに設定されている。また、銀行の財務健全性は良好であり、公的資金を投じる必要性はないとしている。

 しかし、専門家からは政府の対策で金融機関のモラルハザードが問題として浮上する可能性を指摘する声がある。金融機関が来年6月までに借り入れる対外債務を政府が全額保証することで、金融機関の責任問題が棚上げされる可能性が高まったためだ。

 銀行はこれまで海外から資金を無秩序に調達・運用し、短期対外債務を急速に膨らませた。企画財政部は「主要国のように保証額の1%以内で罰金に当たる債務保証手数料を受け取る計画なので、モラルハザードの問題は解決可能だ」としている。だが、政府が債務保証を約束した1000億㌦は、かりに銀行が返済不能となれば、税負担として国民にのしかかってくる。

 政府の今回の対策が根本的な解決策になると楽観はできない。欧米の金融危機が実体経済に波及し、長期化する見通しだからだ。政府は、今回対外債務保証でドル資金不足が緩和され、ウォン安も抑制可能だとみているが、市場の反応は冷たく、21日以後、株価下落、ウォン安はさらに進行している。