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2009/07/17

<総合>世界最大の経済圏・EUとFTA交渉妥結

  • 世界最大の経済圏・EUとFTA交渉妥結①

    FTA交渉妥結を宣言した李明博大統領㊧とEU議長のラインフェルト・スウェーデン首相

  • 世界最大の経済圏・EUとFTA交渉妥結②

 韓国と世界最大の経済圏であるEU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)交渉が妥結した。スウェーデン訪問中の李明博大統領とEU議長である同国のフレデリック・ラインフェルト首相は13日、首脳会談後の記者会見で交渉妥結を公式宣言した。これを受け、韓国とEUは協定締結の手続きに入る。9月末までに協定文に仮署名、来年2月に正式署名した後、各国議会の批准を経て来年6月発効をめざす。発効すれば、韓国製自動車や電子製品の対EU輸出に弾みがつきそうだ。

 2007年5月の交渉開始から2年2カ月ぶりの妥結。最後まで不安感がつきまとったが、何とか妥結宣言にこぎつけた。今回の韓国・EU間のFTAは、①工業製品の関税撤廃②農産物の関税撤廃③サービス市場開放④関税払い戻し⑤原産地証明⑥知的財産権などからなる。

 最も影響の大きい工業製品の関税撤廃については、一部例外を除き韓国・EUとも5年内に全廃する。韓国側は協定発効後、3年内に工業製品の92%(輸入額基準、品目数基準では96%)の関税を撤廃し、5年内に99・5%を撤廃する。例外的に純毛織物やその他機械など41品目に限り7年間関税を維持する。

 一方のEU側は、5年内に例外なく100%撤廃する。そのうち93%(品目基準では99%)は3年内に撤廃する。関税撤廃時期で、韓国がやや有利といえる。また、3年以内に関税が早期撤廃される工業製品の比率は韓米FTAの91・4%を上回る。

 協定発効後、直ちに撤廃する品目は、韓国側が自動車部品、カラーテレビ、冷蔵庫、船舶などで、EU側は自動車部品、無線通信機器部品、薄型ディスプレー、冷蔵庫、エアコンなど。特に自動車は、1500㏄超が3年以内、1500㏄以下の小型車は5年以内に双方共に撤廃する。自動車関税は韓国8%に比べEU10%なので、韓国がやや有利だ。

 農産物の関税撤廃は、韓国側の被害が最も憂慮される分野だ。まず、最大の争点となった豚肉、冷凍サムギョプサルの関税は10年かけて撤廃することになった。これは2014年までに撤廃するとした韓米FTAに比べると好条件だ。ワインは即時撤廃、ウイスキーは3年後撤廃になった。コメ、トウガラシ、ニンニクは関税撤廃対象から除外された。

 法律、会計、通信、金融などサービス市場は韓米FTA水準で開放する。サービス分野については、韓国が第三国とFTAなどで追加の市場開放を約束した場合、これをEUにも適用するという「未来最恵国待遇」条項も盛り込まれた。ただ、合意した開放水準を後退させる貿易措置を取らないという「ラチェット」条項、投資家・国家提訴条項、医薬品分野の特許・許可連係条項は含まれなかった。原産地証明で、開城工業団地製品の扱いは協定発効後に別途の委員会で協議することになった。

 今回のFTA交渉で最大の争点となった関税払い戻し制度については、EUがこれを原則的に認めることにしたが、協定発効後からは域外で作られた原材料の調達方式に重大な変化がある場合は当該品目の払い戻し税率に5%前後の上限を設ける。この制度は、完成品を輸出する目的で輸入した原材料などに課された関税を払い戻す制度で、韓国で恒例化しており、この制度維持は絶対に譲れなかっただけに、経済界も歓迎している。


◆インドとも8月締結へ 全世界にFTA網◆

 EUは英独仏など27カ国が加盟、5億人の人口を抱える。GDP(国内総生産)規模は世界最大の16兆9000億㌦(昨年基準)で、米国の14兆2000億㌦よりも20%ほど多い。韓国にとって、EUとの貿易額は年間1000億㌦に迫り、中国に次いで2番目に大きな貿易相手だ。FTAが発効すれば対EU輸出を画期的に増やせ、経済効果も大きい。サムスン経済研究所は、韓国のGDPを3・08%押し上げる効果があると分析している。これは、韓米FTAが発効した場合の1・28%を上回る。

 他国とのFTAにも効果が期待される。批准が長期にわたり遅れている韓米FTAを前進させる一方、日本や中国とのFTA交渉にも良い影響を与えそうだ。李大統領もストックホルムのホテルで行った記者懇談会で、「韓国とEUのFTAが他国に与える余波が大きい」と評価した。インドも早ければ8月初めごろに韓国とのFTAに署名する予定だ。資源保有国との交渉も今後予定されており、韓国は世界各国にFTA網を張り巡らせる最初の国になりそうだ。

 だが、EUとのFTAはこれで終わったわけではない。今後、協定文は双方の法的検討を経て9月の仮署名時に公開される予定で、協定文は韓国とEU加盟国で使われる23の言語で翻訳される。仮署名、正式署名と進んでも発効するためには加盟国の批准が必要であり、批准が遅れている韓米FTAの先例もあり、100%楽観はできない。今回、韓国のFTAにやや否定的だったイタリアとポーランドが、李大統領との首脳会談後に前向きになったという。今後とも早期は発効に向けて外交的努力が求められるだろう。