ここから本文です

2010/08/20

<総合>韓国・ボリビアのリチウム開発権獲得へ

  • 韓国・ボリビアのリチウム開発権獲得へ①

    未来資源リチウムの宝庫、ボリビアのウユニ塩湖。本格的開発に韓国の参加が期待される

  • 韓国・ボリビアのリチウム開発権獲得へ②

 電気自動車開発の決め手となる二次電池の原料として欠かせないリチウム。世界各国でこの資源争奪戦が繰り広げられているが、いま最も注目を集めているが世界最大のリチウム埋蔵量を誇るボリビアのウユニ塩湖だ。韓国は、このウユニ塩湖のリチウム開発権を真っ先に獲得する見通しとなった。今月末に訪韓するボリビアのモラレス大統領との首脳会談で、リチウム開発及び技術協力に関する基本合意書を締結することになっており、日中仏など競争国が今後の行方を注視している。

 ボリビアの南西、海抜3700㍍の高地にあるウユニ湖は、雨期には塩水に覆われるが、乾期には湖は完全に干上がり、塩結晶だけが残る。見渡す限り真っ白な塩原が南北100㌔、東西250㌔に広がる。ここに世界の埋蔵量の50%を占める540万㌧のリチウム資源が眠っている。海水のリチウム濃度は普通0・17ppmだが、ウユニ塩湖は1万6000倍の以上の2830ppmもあり、リチウム資源の宝庫として注目されていた。

 リチウム需要の急増を受けて、ボリビア政府は初めて本格的な開発に着手し、韓国、日本、フランスにブラジル、中国も加わり開発権を争っている。そうした中で、韓国が一歩先行する見通しが立った。

 政府当局者によると、今月末にソウルで行われる李明博大統領とモラレス大統領の首脳会談で、リチウム開発問題について集中的に話し合う予定だ。現在、韓国のリチウム開発参入を保障する内容の基本合意書の文言を最終調整している。

 ボリビアは資源開発を国営で進めているが、リチウムを抽出するための独自技術を持たないため、外国から技術を受け入れることを決めた。これを受け、韓国と日本、フランスが抽出技術の提供を申し出ており、日本とフランスは巨額の借款提供も武器に開発権の獲得をめざしているとされる。

 このような各国の働きかけに対して、左派傾向が強いボリビア政府は、資源搾取を恐れ、過去に帝国主義の歴史がある国との協力には消極的とされる。リチウム採掘を管轄するボリビア国営鉱業公社のトップは、「わが国の天然資源に関しては、以前の帝国主義採掘モデルはボリビアでは二度と繰り返さない」と述べている。こうした中、リチウム開発で実績もある韓国への関心が強まったようだ。ボリビアが韓国に関心を示しているもう一つの理由は、貧困から脱して経済成長をとげた韓国の経済発展モデルの伝授を臨んでいるからだといわれ、韓国側はこれに積極的に応えたいとしている。

 韓国鉱物資源公社は昨年8月、ボリビア側とリチウム開発と産業化研究のための了解覚書(MOU)を締結。最近も現地に実務交渉団を派遣し、ボリビア政府に対し、ウユニ湖の塩水を活用したリチウム抽出技術に関する説明会を開いた。政府は昨年9月と10月に続き今年1月にも、李大統領の実兄、李相得議員を大統領特使として派遣し、リチウム開発関連の話し合いを継続してきた。

 モラレス大統領は今回の訪韓に際し、リチウム開発権を韓国と争う日本や中国を同時訪問しない。政府関係者は「基本合意書に署名できれば、リチウム開発でライバル国よりも優位に立つことができる」と語った。

 石油が中東に偏在しているのと同様、リチウムは南米に集中している。南米の貧困国ボリビアは、リチウムを武器に「21世紀のサウジアラビア」になるかも知れないだけに、開発権をどの国与えるかは極めて重要な選択であり、なお予断は許さない。 

 電気自動車などに使用されるリチウムイオン電池の世界市場規模は、昨年の99億㌦から今年は123億㌦に増え、2020年には778億㌦に急増すると予想されているが、韓国は、リチウムの全量を輸入している。世界シェアは1位三洋電機19・4%、2位サムスンSDI18・7%、3位LG化学16・6%の順だ。開発権の結果いかんでは、業界の勢力図にも大きな変化が予想される。


◆未来資源のリチウム◆

 アルカリ金属の一種。リチウムを主原料とするリチウムイオン電池は、小型軽量で多くの電気エネルギーを貯蔵でき、電気自動車、携帯電話、パソコンなどに使用されている。

 全世界のリチウムの70%がボリビアやチリなど南米に埋蔵されている。特にウユニ塩湖のリチウム資源は世界埋蔵量の半分を占める。ボリビアは国営事業としてこの塩湖のリチウム開発のためのパイロットプラントの設置を進めている。