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2011/03/04

<総合>原油急騰が韓国経済痛打・「5%成長、3%物価」目標崩れる

  • 原油急騰が韓国経済痛打・「5%成長、3%物価」目標崩れる

    韓国が輸入する原油の基準となるドバイ原油価格は1バレル=110㌦を突破

 中東発の悪材料が韓国経済を痛打している。株価は見る間に下がり、2000を突破していた総合株価指数は2日には1928・24まで下落した。原油輸入価格はついに1バレル=100ドルに跳ね上がった。物価高は持続し、2月も4・5%の高水準だ。中東での建設受注も厳しくなりそうで、年間700億㌦達成に早くも赤信号が点滅。民間研究機関は主要経済指標の下向き調整を始めた。政府も経済政策の手直しが避けられなくなってきた。

 政府は今年の経済運用計画の前提として、原油輸入価格を1バレル=85㌦に設定していた。だが、原油価格の急騰でその前提が崩れ、2月の輸入価格は90㌦に達し、月末には100㌦を記録した。原油だけではなく、原資材価格が相次いで急騰。韓国が輸入する10大原資材のうち銅、アルミ、ニッケル、小麦、原糖の5品目は史上最高値をつけた。ニッケルは1年前に比べ40%上昇している。

 そうでなくとも、口蹄疫被害も重なり食料品価格が上昇、物価は年初から大きな問題として浮上していた。消費者物価上昇率は1、2月に連続4・5%を記録、政府が目標とする3%台を超える高値が続いている。

 昨年6月、OECD(経済協力開発機構)とFAO(食糧農業機構)は、「自給率が低い国家は食糧安保に脅かされるだろう」と警告。それに先立って、IMF(国際通貨基金)は「原油、銅などの原資材価格が急騰するだろう」と予見していた。中東の突発事態は予見できなくとも、経済環境の変化に対処できなかった政府の責任は重いと指摘されている。

 ともかく、政府が掲げる5%成長、3%台の物価安定の目標を達成するのは厳しくなってきた。民間研究機関はすでに主要経済目標値の引き下げ調整に入っており、4・1%成長を見込んでいたLG経済研究所は「原油価格100㌦台が続けば成長率は3%を割る可能性が高い」との見方だ。専門家からはスタグフレーション(景気後退下の物価高)を警戒する声も聞かれる。

 経済の舵取り役の尹増鉉(ユン・ジュンヒョン)・企画財政部長官は、「経済に暗雲が垂れ込めており、政府の政策空間が次第に狭まっている」と厳しい現状を認めながらも、「原油、農水産物、原資材などの衝撃が発生したが、まだ2カ月しか経っていない時点で年間の展望値を修正する段階ではない」と慎重だ。だが、「備えあれば憂いなし」という。現状認識を誤らず、スタグフレーションに備えるためにも、経済政策の弾力的運用は不可避なようだ。

 実際、08年に原油価格が100㌦を突破する原油急騰を受けて、6%成長の経済運用計画を修正したことがある。今回は前回になかった国内物価の高騰もある。現在、中東の政情不安はすぐに収まる可能性は低く、湾岸産油国に広がれば、世界経済へのダメージはさらに大きくなるしかない。改めて、韓国の生命線であるエネルギー対策が問われる。

 政府は、原油輸入の多角化を勧めるため輸送費用の支援などの検討を始めた。中東産の輸入比率を80%以下に引き下げるのが目標だ。08年に86・3%から昨年には81・8%にまで下がっている。大手石油会社のSKエネルギーは原油の中東比重を09年の78・8%から昨年には73・1%にまで下げた。同社関係者は「インドネシアや豪州との協力を強化している」説明している。GSカルテックスはロシア産原油比率を09年の5%から10%に高めた。昨年、ナホトカ近郊のコズミノ港原油船積みターミナルが完工し、原油輸入が円滑化したのが大きい。ちなみにロシア産原油の輸入比率は08年の2・7%から昨年は5・7%に高まっている。

 しかし、中東産原油価格が上昇すれば、北海産やその他の原油価格も連動して上昇するのは避けられない。このため、安定確保のメリットはあるが、実益は少ない。海外の原油・ガス田の確保や新・再生エネルギーに一層の力を入れる必要性が増している。

 中東の政情不安の背景に食料品の高騰もあるとされるが、韓国にとっても物価高の原因にもなった食糧問題に目を向ける必要が出てきた。いま韓国の食糧自給率は27%にすぎない。5000万人の人口を抱える韓国にとって農業対策も引き続き重要であることが、今回の一つの教訓となった。