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2011/09/16

<総合>福祉重視・格差是正の政策強める

  • 福祉重視・格差是正の政策強める

       非正規職撤廃を求める勤労者

 来年度予算編成を急いでいる政府・与党は、拡大する経済社会的な格差是正の政策を強化するため、福祉重視へ大きく舵を切っている。福祉ポピュリズムを批判する声も出ているが、大学の授業料引き下げ、所得税と法人税の最高税率引き下げ凍結に続き、低所得非正規職に対する社会保険料支援、就労が困難な青年や老人・障害者らに対する働き口確保などの対策を相次いで打ち出した。来年の福祉予算は大幅に拡大しそうで、財政均衡化政策との調整が問われることになりそうだ。

 与党・ハンナラ党は、5月末に大学授業料について、現在の半額に引き下げることを主張した。だが、政府との協議の結果、所得階層別に差を設けて支援することで決着した。支援額は1兆5000億ウォンにのぼる。

 また政府・与党は、低所得非正規職勤労者に対する賃金・勤労時間差別を是正する内容の「非正規職総合対策」を発表。来年施行予定の同対策は、不合理な差別を受けているとされる280万人の低所得非正規職勤労者を主な対象にしている。

 今回の対策は、社会保険加入率を高める形で非正規職に対するセーフティーネット強化に重点を置いている。5人未満の事業所で最低賃金の120%以下(月124万ウォン)を支給されている勤労者に対する社会保険料の3分の1を政府が支援するというものだ。これで、雇用保険、国民年金の加入を促進する。この措置が施行されれば、71万人以上が1人当たり25万ウォンの恩恵を受ける見込み。すでに加入した場合でも恩恵があると説明された。政府は関連予算を2300億ウォンと試算している。

 今対策のもうひとつのポイントは、非正規職差別解消のため多様な法的・制度的措置を講じている点だ。例えば、勤労監督官制度は大幅に強化された。事業主が非正規職に対する差別解消を拒否すれば、是正命令を出すことができ、命令に背けば最大1億ウォンの過怠料を課すことができるようになった。

 また、政府のコントロールが可能な240余りの公企業と公共機関に対して、具体的な雇用形態別人員と雇用構造を公開することを義務化した。非正規職の実体が明らかになれば、賃金・差別是正を企業側も放置できなくなる効果がある。

 だが、この総合対策に対して、経済界と労働界はともに反発している。

 韓国経営者総協会は、「非正規職雇用に対する規制だけを過度に強化し、雇用主体である企業の事情と労働市場の現実を度外視している。雇用自体は今より遥かに減る可能性が大きい」と主張した。韓国労総は、「10人未満の事業所と最低賃金の130%以下の勤労者を対象にするとした当初の方針が大きく後退した」として、対策に実効性がないと批判した。特に、当初予定されていた正社員の57%水準にとどまっている非正規勤労者の賃金を80%までに段階的に引き上げる対策が削除され、最大の目玉となるはずだった賃金格差是正に失敗した。

 だが、非正規職の差別是正に政府が本腰を入れて取り組んでいることは企業にとっても無視できない。非正規職の待遇改善に向けた環境整備に布石を打ったことにはなる。実際に「社会保険支援など該当勤労者の処遇改善に実質的に役立つ」と期待する声もある。就労が困難な弱者を対象にした働き口確保事業も拡大する。政府・与党は13日、彼らを対象にする雇用を来年には56万人(今年54万人)に増やす対策を発表した。このために9兆4000億ウォンの予算を投じる。

 また、基礎生活保障受給者を自立させる対策として就業を斡旋する「就業成功パッケージ」事業も強化する。来年には事業対象を5万人から7万人に拡大する。