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2012/11/30

<総合>大統領選スタート・格差是正へ一騎打ち

  • 大統領選スタート・格差是正へ一騎打ち①
  • 大統領選スタート・格差是正へ一騎打ち②

                       朴 槿惠候補

  • 大統領選スタート・格差是正へ一騎打ち③

                      文 在寅候補

 各候補の立候補登録が終わり、27日から大統領選挙が公式にスタートした。7人が大統領選に立候補したが、与党セヌリ党の朴槿惠氏(パク・クネ、60)と最大野党・民主党統合党の文在寅氏(ムン・ジェイン、59)の事実上の一騎打ちだ。李明博政権で深刻化した格差是正、福祉拡充、財閥改革を柱とする「経済民主化」が最大の争点となっており、経済政策が問われる大統領選挙となりそうだ。有力候補だった無所属の安哲秀(アン・チョルス)氏が直前で出馬を辞退し、安氏を支持していた無党派層の票の動きも注目されている。安氏辞任後の各種世論調査では、朴候補が一歩リードしているが、激戦が予想されている。12月19日の投票日まで目の離せない選挙戦となりそうだ。

 朴候補は27日、中部地域の大田(テジョン)で第一声をあげ、「準備された未来に進むか、失敗した過去に戻るかの重大な岐路に立っている」と強調。盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領の片腕だった文候補を「不動産価格や大学の授業料を暴騰させ、失敗した政権の中心人物」と切り捨てた。また「国民大統合で新しい韓国をつくる。約束を守る新しい政治を開く」と訴えた。

 前日のテレビ討論では、1000兆ウォンにのぼる個人負債問題を取り上げ、「個人だけでなく国の経済に大きな脅威になる」と指摘。最優先課題として解決に取り組む姿勢を示した。また、「教育費削減、雇用創出に注力し、国民の7割が中間層になる国づくりを目指す」と訴えた。

 文候補は釜山で遊説を開始、「新しい政治を通じて経済民主化と福祉国家という新時代を開く」と力説した。25日の候補登録後の会見では出馬を辞退した安哲秀氏の決断を評価し、「政権交代後も安氏と連帯し、改革と統合の基盤になるよう努力する」と強調。「福祉と国民の暮らしを守る勢力を選択してほしい」と訴えた。

 選挙戦の最大テーマは「格差是正」。両候補とも格差是正や福祉充実、経済民主化を公約に掲げている。めざす方向は同じだが、違いは漸進的に進める朴候補に比べ、文候補はより急進的である点だ。勝敗は、有権者がどちらに現実性があると判断するかにかかっている。

 特に焦点となる「経済民主化」について、朴候補は成長との調和を重視。財閥のオーナー世襲体制を可能にしている循環出資に対して、新規分は禁止するが、投資を制限する出資総額制の復活には反対している。財閥に対する無差別な規制ではなく、歪曲された市場支配力と独占環境の改善に力をいれ、公正な市場秩序をめざす。

 一方の文候補は、雇用が福祉の核心であり、成長を牽引する社会をつくるとの信念で70万人の雇用創出を掲げた。また循環出資は既存分に対しても3年以内の解消、総額出資制度の再導入を公約に掲げている。財閥に対する規制が相当に強化されている。

 対日政策は両候補とも未来志向的な発展をめざすとしている。朴候補は韓日FTA(自由貿易協定)推進をアピール。文候補もすべての分野での交流活性化を謳っている。

だが、領土問題や従軍慰安婦問題はともに厳しい姿勢で臨んでいる。

 南北関係では、朴候補がソウルと平壌(ピョンヤン)に「交流協力事務所」を設置するとしたほか、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記との南北首脳会談に臨む意思があることを明言。「多様な対話チャンネルが開かれていなければならない」と対話重視の姿勢を強調した。

 文候補は、米中両首脳との会談後、来年中に南北首脳会談を開くと明言。李政権下で悪化した南北関係を立て直す必要があると強調した。両候補とも南北関係の改善に力を入れる方針だ。

 世論調査をみると、両候補の支持率は追いつ追われつの大接戦だったが、安候補が文候補との一本化失敗で立候補を辞退した後に実施された各種世論調査では、ほとんどが朴候補が文候補を抑えて優位に立った。その差は2・7~5・8ポイント。最も支持率が開いたSBS調査で、朴候補43・4%、文候補37・6%の5・8ポイント差。最も票差が小さいKBS調査では朴候補46・8%、文候補44・1で2・7ポイント差。朝鮮日報、東亜日報など主要紙調査は3ポイント台の差となった。

 韓国経済新聞の調査は、41・7%対40・9%の僅差で文候補の支持率が上回ったが、「経済をより良くする候補」としては朴候補が40・4%で安候補の33・9%を大きく上回った。しかし、社会統合では文候補に軍配があがった。

 このような世論調査結果に対し、専門家は「安候補支持者の多くが無党派層であり、既存の政治に対し批判的・冷笑的な見方を持っている。安候補の立候補取りやめの形式自体が文候補に良くない影響を及ぼしたとみられる」と分析した。


■7人の立候補(敬称略)■
朴 槿惠(セヌリ党)
文 在寅(民主統合党)
李 正姫(統合進歩党)
朴 鍾善(無所属)
金 昭廷(無所属)
姜 智遠(無所属)
金 順子(無所属)