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2000/09/22

<鳳仙花>◆オリンピックと平和◆

 やはりオリンピックは世界最大の「平和の祭典」である。シドニーオリンピックの入場行進を見て、つくづくそう感じた。
 
 参加国・地域は過去最大の200に及び、国連加盟188を上回る。普段聞かないアフリカやカリブ海、太平洋上の国々がアナウンスされる。英領、オランダ領などのまだ独立していない国もある。インドネシアから分離独立を求めて、現在国連管理下にある東ティモールも個人参加が認められ、元気に行進した。
 
 そして最大のハイライトは南北同時入場行進だ。白地に韓半島を青く染め抜いた統一旗を先頭に韓国と北朝鮮の選手たちが一緒になって行進する姿に、11万観衆は総立ちになって拍手を送った。アナウンサーが「これほど関心があるとは」と驚いていたが、それは世界の人々が南北の和解を熱烈に歓迎している心情の表れであり、平和が世界の願いであるからに違いない。
 
 オリンピックはいつ見ても民族と国家ということを考えさせられる。
 
 いうまでもなく、オリンピックは国が開催するのではなく都市に開催権がある。国と国との競争でなく、個人が競い合う場であるという趣旨からだ。だが現実には、国の威信をかけたメダル争いが繰り広げられ、メダルに届かない国や地域のことが忘れ去られている。平和を乱すいさかいになってはならない。
 
 古代オリンピックは開催期間中、戦争を中断して交戦国同士も参加する文字通り「平和の祭典」だった。しかし、近代五輪では政治に揺さぶられた。最近でも、88年のソウル五輪までは3大会連続してボイコット騒ぎがあった。それから12年。今回はアフガニスタンを除く全会員国が参加した。世界が平和へ向け前進したからだろう。
 
 分断を乗り越えて、初の同時入場を実現した南北はそのシンボルとなった。少なくとも世界の人々はそう思っている。その期待を裏切らないでほしい。(S)