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2001/10/05

<鳳仙花>◆韓日協力で明かす星の神秘◆

 高さ9㍍、花崗岩が煉瓦積みされた塔は、千数百年の風雪に耐えて、静かに立っていた。慶州を初めて訪れたとき、最も印象的だったのが「チョムソンデ」である。世界最古の天文台といわれ、新羅時代の630年ごろにつくられた。このころから、天文観察を行い、暦や占星術を政(まつりごと)に取り入れていた新羅人の文明の高さに驚いたものだ。

 新羅人のこころは、いまに受け継がれ、韓国では天体観測が盛んだ。その中心となる国立天文研究院大徳電波天文台(大田市)が、日本の文部科学省国立天文台と共同で、VLBI(超長基線電波干渉計)の実験を開始し、感度の高い3・7㍉の短波長での観測に成功、おおいぬ座の変光星をとらえた。短波長の観測に成功したのは世界にも例がない。

 VLBIは、二つ以上の電波望遠鏡で受信した天体の信号を合成することで天体の観測を精緻化するものだ。実験では、大徳電波天文台の14㍉電波望遠鏡と日本の長野県にある野辺山宇宙電波観測所の45㍉を使った。大徳と野辺山の距離は約千㌔で、韓日の望遠鏡が合体したことで口径千㌔の巨大望遠鏡が誕生したことになる。天文ファンならずとも、このような壮大なプロジェクトに胸が躍るに違いない。

 韓国は今年から国内3カ所に電波望遠鏡を新設してVLBI観測ネットワークの構築を進めており、今回の韓日協力で初めて観測に成功した。今後も韓日の天文学者らが協力してVLBI観測を進め、世界に類のない独自の観測システムを完成させる計画だという。

 韓日には、このように協力できる分野が数多くあり、両国が力を合わせれば、大きな成果があがるだろう。今回の天文協力はその格好の例といえよう。(N)