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2001/06/15

<鳳仙花>◆恐い歴史教科書◆

 韓国や中国が修正を要求している「新しい歴史教科書をつくる会」の中学用「新しい歴史教科書」(扶桑社)の市販本が書店に並んでいる。さっそく入手し、読んでみた。

 まず、「歴史を学ぶことは」と題された巻頭の一文を読んで唖然とした。そこには「歴史を学ぶのは過去の事実を知ることでは必ずしもない。過去の事実を厳密に、そして正確に知ることは可能ではないからである。歴史は民族によって、それぞれ異なって当然かもしれない。国の数だけ歴史があって、少しも不思議ではないのかもしれない」と指摘してある。こういう考えからいくと、歴史というのは、それぞれの国によって解釈が異なるのだから、自分たちの主観で記述しても構わないということになりはしないか。

 全体を通読して感じたことは、韓国との関係史が少ないことだ。特に近代史になると、韓日併合の記述はあるものの、植民地支配の実態、従軍慰安婦、強制連行といった記述は一切ない。韓日国交正常化など大事な項目はすっぽり抜け落ちている。

 ちなみに、この教科書に登場する韓国関連の人物は、たった3人である。朝鮮王朝の開祖・李成桂、秀吉の侵略の際、日本軍を海戦で破った李舜臣、そして旧韓末の親日派・金玉均のみ。独立運動の闘志として韓国では英雄視されている安重根や「韓国のジャンヌダルク」柳寛順は無視され、李承晩や朴正煕といった大統領の名さえない。

 また、在日韓国人に関する記述が皆無なのも気になる。こういう教科書で学ぶ中学生は、同じ日本社会に生きる隣人のルーツを何も知らされないで育つということになる。

 韓国がなぜ修正を要求しているのか、この教科書に目を通せばだれにでもわかるだろう。こんな歴史教育を子供たちに押しつけてはならないと思う。(A)