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2003/01/17

<鳳仙花>◆「殺身成仁」から2年◆

 韓国でも息子の死を無駄にしたくないと活動を続ける夫婦がいる。2001年1月26日午後7時15分、JR山手線新大久保駅で誤ってホームから転落した見知らぬ日本人を助けようとして列車に轢かれて亡くなった韓国人留学生、李秀賢さんのご両親だ。

 この事件は発生直後から韓日のマスコミで大きく取り上げられ、留学先の赤門会日本語学校で営まれた学校葬には森喜朗総理(当時)ら日本政府の閣僚も多数駆けつけた。

 金大中大統領も「殺身成仁(自分の命を犠牲にしても仁を成す)の崇高な犠牲精神は、韓日両国民の心の中に永遠に記憶されるでしょう」との弔電を寄せた。

 事件は社会的影響を広げ、李さんのご両親には見舞いや励ましの手紙が数え切れないほど寄せられた。

 ご両親はその集まった2200万円の見舞金をもとに、友人や李秀賢さんが生前通っていた赤門会日本語学校の関係者とともに李秀賢顕彰奨学会を昨年1月に作った。選考の結果、同年10月に韓国からの留学生93人に奨学金各15万円を手渡した。

 李秀賢さんは卒業後は韓日貿易に携わり、貿易の仕事を通して韓日友好に貢献するのが夢だったという。その息子の夢を大切にすべく、韓日友好に貢献する人材を育てる一助になればというのがご両親の願いである。

 地元の釜山市には顕彰碑も建てられ、事件を風化させないようにしているが、日本ではいま、事件のことをどれだけの人が覚えているのだろうか。

 26日には都内で偲ぶ会や追悼コンサートが開かれるという。李さんの崇高な精神、そしてご両親の2年間の歩みに、思いをはせてみたいものだ。(L)