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2004/12/10

<鳳仙花>◆サムスン電子の限界への挑戦◆

 あらゆる産業に使われている半導体は私たちの生活を格段に便利にしている。超薄型テレビをはじめ様々な家電製品の高機能化のみならず、自動車のハイテク化を実現。パソコンも携帯電話も半導体の高集積化なしには誕生しなかった。

 この半導体の世界で韓国のサムスン電子が果敢な挑戦を続けている。半導体事業に着手して30年。当時、米国や日本メーカーに比べて新参者だったが、今日ではメモリー半導体市場でシェア25%の世界トップの座を確保する大躍進をとげた。さらに、来年から2010年までの6年間に25兆ウオン(約2兆4000億円)の大規模投資を決断した。市場は今後飛躍的に拡大するとの読みがあるが、半導体全体で世界1のインテルを追撃する思い切った挑戦といえる。

 実は、メモリー半導体は10年前までは日本の方がまだ優勢だった。それが韓国にシェアを奪われ、いまは挽回に必死だ。何が明暗を分けたのだろうか。半導体は技術革新が日進月歩ですすみ、設備投資に莫大な資金を要するといわれる。サムスンの李健熙会長は、「半導体産業の特性はタイミングである。時期を失すれば損失が大きい。先行投資が何より重要だ」との考えを貫いたが、失敗すれば屋台骨が揺れる大打撃が必至なだけに、内心は冷や冷やだったかも知れない。リスクを恐れぬ挑戦、その冒険心というか挑戦精神は学びたい。

 73年にノーベル賞を受賞した江崎玲於奈博士はかつて、「人類文明の発展の過程をたどれば、そこには先人たちが人間の能力の限界に対する挑戦を行った歴史を見ることができる。例えば頭脳労働力の限界への挑戦がコンピューターを生み、ITという分野を開拓した」と喝破したが、まさに企業も挑戦の連続だといえる。

 韓国の企業は日本や欧米諸国に比べみな若く、挑戦しなければいつまでたっても後塵を拝するしかない。その意味でも半導体におけるサムスンの実践は貴重なモデルケースだ。しかし、韓国の半導体は世界を席巻しているが、肝心の半導体製造装置はほとんど日本からの輸入に依存している。この分野でも新たな挑戦をしてほしい。(S)